「来年は“50歳目前”と見られるでしょ。だから、今年が実質的な40代最後の年。負荷をかけないと、と真摯に思っています。そこで、ジャンルが違う3本の舞台に出ようと決めました。これをやり遂げられないようじゃ50代には行けないぞ、と緊張感を持って。30代で『オットーと呼ばれる日本人』という厳しい舞台に臨むとき、クリアしないと充実した40代はないという覚悟で背伸びして自分を鼓舞したように」
そう話すのは、1月に48歳になった吉田栄作。目標を定め計画的に邁進するのが、若いころからの彼の流儀だ。そんな吉田の今年最初の舞台、音楽劇『私はだれでしょう』(3月5〜26日、東京・紀伊国屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて)は、敗戦後の日本のラジオ界を生きた人たちの物語。吉田は、占領下の放送を監視する民間情報教育局のラジオ担当官、日系二世のフランク馬場を演じる。
「フランクが遠い存在に思えないんですよ。同じ神奈川県出身で、彼は僕も何年か暮らしたカリフォルニア育ちで日本名も持っている。そんな縁で思い入れが深まり、物語の奥に隠されているテーマが心を揺さぶりました」
’95年、芸能活動を一時休止して渡米する前に、憧れのシンガー・ソングライターの浜田省吾は『真夏の路上』という楽曲を書き下ろした。
「帰国して30代になると、あえて物事を複雑に考えて、ちゃんと実現できるよう努力しました。でね、35歳のときに浜田さんから『もう少しでラクに仕事ができるようになるね』って言われたの。ご自身の体験から出た言葉なんだろうな。そんなときが僕にも来るんだと心に留めていたら、40歳、朝ドラ『だんだん』のころにラクになってきた。その流れでここまで来られたんだけど、このまま50代に行きたくなくて」
最後に吉田は、音楽劇『私はだれでしょう』の見どころをこう語る。
「平和な今の日本で、この平和が本物なのかを深く考えてみる視点も持たないとダメだと思う。演出家の栗山民也さんの狙いは、観客に“自分とは……日本人とは誰なのか?”を考えてもらうことなのでしょう」