「600回もやったんだ……。そりゃ連載を始めたころは丸かった私のお尻が、垂れ下がって四角くなるはずだよ」
そうゲラゲラ大笑いするのは、本誌で『家長ムロイの闘う「お財布」』を連載する、作家の室井佑月さん(47)。連載がスタートしたのは’04年5月のこと。室井さんが身の回りで気になる“お金”のことについて、“今週のお値段”としてテーマに掲げてつづっていくエッセイが、600回を迎えた。
「ネタは身の回りにあるお金のことだから、それほど書くことに困ったことはないかな。国民のことを無視している安倍さんが首相を続けているから、今は“政権批判”がガンガンしているけど……、もともとやりたいテーマではないのよね。私の立ち位置が、大御所でもないし、ペーペーともちょっと違う気楽なスタンス。コスメ、洋服、食べ物など、誰におもねることなく、好きなように書けるのが楽しい。いろいろな雑誌で連載しているけど、いちばん長く続いているのが、この『闘う「お財布」』なんだよね」(室井さん・以下同)
連載を通して一貫しているのが彼女のブレない視点。読者と同じ目線で描かれる室井さんのエッセイを心待ちにしているファンが多い。
「“新発売”や“初めての感覚”というキーワードにとにかく弱い。デパートの化粧品コーナーでも『最高にいいですよ』といわれると、つい一式そろえてしまい、欲しくないコスメまで買ってしまう。あと海外旅行でも、“もう二度と来られない”と思うと、たとえばレストランでチキンを食べようとして、いくつも味つけがあれば、全部の味を試してみないと気がすまない。そんな自分の気持ちには正直でいたいし、お金を使って感じたことや失敗したこと、愚痴なども、包み隠さずに書いているからね。この前もイボ痔をとってもらったけど、この手術代もネタとして使わないと……と思ったの!」
まさに身銭を切った“お金”の話−−。それが読者の共感を呼ぶのだろう。とりわけ読者の反響が大きいのがコスメの話。連載開始当初は描かれなかった“ネットショッピング術”も読者の評判がいい。
「何度も失敗してお金をかけたからね。商品のランキングだけを見てはダメ。とくに『使用者の声』にはお金をもらって感想を書いている“サクラ”がいるから要注意。一般の人が書いた本当の感想を見抜ける力が大事かな。それと、ネット上にはたくさんの流行商品があふれているから迷うけど、たとえば、ファンデーションなら“薄塗り”、ジェルネイルなら“はげない”という“基本姿勢”をブレさせないこと!」
年を重ねるごとに変化する見た目と“苦闘”する室井さん。その姿に「わかる、わかる」とヒザを打つ読者も少なくないはず。
「でも、私はそんなに年をとることに抵抗を感じていないの。だって、ステキなつえを持っているおじいちゃんや、派手な色のコート姿のおばあちゃんって、“すごくイイ”と思うんだよね。たしかに鏡を見て、目尻のシワが増えていて、びっくりすることもあるけど、いくつになっても、私が私であることは変わらないしね。これから私のことを本当に愛してくれて、私を変えてくれる人が現れたら、ちょっとは違うかもしれないけど、そんな出会いはないだろうな……。まあ、これからも同じスタンスで書き続けるんでしょうね」