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「学校の先生になりたいって、誰もが一度は思うんじゃないでしょうか。子どもが好きなので、僕も憧れたことがあります。でも、先生という立場は、子どもたちに思いのほか影響を与えて、責任重大だなぁと」

 

こう話すのは、俳優の三上真史(34)。涼しげで優しい印象の好青年だ。庭いじりが好きな母親を手伝って子どものころから園芸に親しみ、現在はNHK『趣味の園芸』のナビゲーターも務める。

 

西川司の自伝小説が原作の舞台、『向日葵のかっちゃん』。支援学級「ひまわり学級」に通う“かっちゃん”は、時計も漢字も読めず母親さえいら立たせてしまう。三上は、そんな彼を心と体を使った独自の方法で指導し、級友についていけないみじめな日々から救い出す熱血教師・森田を演じる。

 

原作を読んだ三上は、小学校低学年のときの“500円玉事件”を思い出したという。

 

「友達がほかの子から借りた500円でおやつを買って、そのお金を返さなかったんですよ。で、その子が先生に叱られたんですが、『三上やみんなも共犯』と嘘をついちゃって、先生は彼の言葉だけを信じた。僕たちがまだ純粋だった年ごろにですよ(笑)」

 

友達が嘘をついたことや、先生が話を信じてくれなかったことがショックだったのを今でも覚えているそうだ。

 

「森田先生だったら僕らの話にも耳を貸してくれたでしょうね。人の心の痛みや挫折感は経験しないとわからない。ずっと挫折せずに正義と真実だけで生きてきたら、森田先生のように子どもの可能性を信じる指導ってできないと思う」

 

子どもは大人をしっかり見ていて、マネして育つ。

 

「たとえば、小学生のころは先生が黒板に書く字に自然と似てきたりして。よく『今どきの若者は』と言うけれど、大人の子どもに対する嘆きの原因は、親や先生たち大人の教えを子どもがそのまま反映しているものかもしれない。大人は子どもにとって鑑(かがみ)なんです」

 

教育と園芸は似ている。三上は「“育てること”が好きです」と楽しそうに言う。

 

「正解がないことが好きなんですよ。まだ花を咲かせていない新芽の状態の子どもたちと一緒に、僕自身も育っていくのがいいな。人って、出会いの積み重ねで影響を受けてでき上がっていくものだと思っています」

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