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「終わりのための活動」という言葉の響きで、マイナスイメージも持たれがちな“終活”。だが、ときに“終活”が残りの人生を輝かせることもある。そんな、“日々を充実させる終活”を実践する女優たちに話を聞いた。

 

「私にとっての終活は、明るくて楽しい飲み友達を増やすことなんです。つまり、孤独にならないための終活ですね」

 

こう話すのは、女優の藤田弓子(72)。’64年文学座に入団し、’67年に初舞台『カンガルー』に出演。’68年NHK連続テレビ小説『あしたこそ』のヒロインに。女優以外にも、声優や旅番組の案内役など、幅広く活躍している。

 

「この年齢になると、知人がどんどんいなくなっていくんですよね。放送作家をしている6歳年上の主人(※河野洋氏)も最近、調子を崩して入院したんです。夫ももう78歳ですから、当然なんですけれども、そのとき初めて『ああ、私たちはもうそういう年齢なんだ。いつかはどっちかが先に逝っちゃうんだな』って思ったんです」

 

藤田が初舞台を踏んでからすでに50年になる。

 

「これまでの私の人生はお芝居の仕事で、ずっと忙しかったけれど、素晴らしい人たちにもたくさん出会えました。ただ、そのお仕事が終わったらお別れになります。そして次のお仕事でまた誰かに出会って、そして別れて……、この繰り返しでした。若いころはそれも気になりませんでした。別れるときに『じゃあ、またね!』なんて言って、それで何十年も会わないなんてこともザラでした。でも、この年になってくると『“また”があるかどうかもわからないわ。もっと人との付き合いを濃くしなくちゃ!』って思うようになったんです。今では『近いうちにまた!』といわれたら、『じゃあ、いつにしようか?』と、食事をしたり、飲みに行ったりする日程をすぐに決めています」

 

現在、彼女は静岡県伊豆の国市で生活しており、地元の市民劇団『いず夢』を主宰している。

 

「『いず夢』のみんなとも長い付き合いになりますけれども、彼らの本業のお話なんて、役者の世界では知りえないような面白いエピソードがいっぱいです。主人も、あまり老けませんね。いまでも新しいコントを作ったりしています。主人ともなるべく長く、いい飲み友達でいたいと思ってます。飲むときはウイスキーやワインが中心です。私、若いころからお酒は相当強くて、昔、何かの雑誌に掲載された『女優酒豪番付』では東の大関だったくらい(笑)。だからいまでもこうして若い人たちといっしょに飲めているんでしょうね。肝臓の数値は問題ないんですよ」

 

だたし、家の中は散らかったままなのだそう。夫には「私が死んだら、みんな捨てておいて」と言っているという。

 

「終活といえば持ち物を整理したりする人もいると思いますが、私にとっては、これまで出会った人と縁を結び直して、人生をもっともっと楽しく充実させることが“終活”なんです。片づけをしている暇なんてありませんよ(笑)」

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