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「昨年の10月後半の寒い時期に静岡県・沼津の市街地にある川で、台本には書かれてなかったんですけど、本番中に何かの衝動に駆られて、そのまま勢いでじゃぶんと倒れちゃったんですね。自分が想像するよりも寒いし、スーツは水を吸って重くて、川の流れは速いので溺れるのではないかと少し焦りましたね。助監督さんには、“事故になったら大変ですよ、勘弁してください”と言われてしまいました(笑)」

 

ヒヤっとした撮影舞台裏を笑いながら話すのは、俳優の小林且弥(36)。冒頭の撮影秘話は絶賛上映中の映画『ゼニガタ』のあるワンシーン。本映画は、闇金融を営むハードボイルドな兄弟が題材となっている。小林は、大谷亮平(37)が演じる主人公の銭形富男の弟役・静香を演じている。

 

「題名にもあるように、お金がキーワードとなっている映画です。お金というフィルターを通し、人がどうなっていくのかという人間ドラマが描かれていま、す。表向きは居酒屋だけど実は闇金という一見ファンタジー的な要素もありますが、お金は勝ち得ていくものというある種の固定概念とは対照的に、人がお金に使われているという逆転現象が起きているという点を、ぜひ感じてほしいですね」

 

スクリーンではクールな役を演じている小林と大谷。だが気になるのはプライベートな素顔。大谷は韓国で芸能活動していたが、それにまつわるエピソードを小林が明かす。

 

「大谷さんと韓国料理に行ったんです。そしたらキムチへのこだわりが凄い。やはり本場仕込みだなと感じましたね。普段は落ち着いている雰囲気の大谷さんも、韓国料理に対してはどこか厳しい目をしてましたね(笑)」

 

そんな大谷との食事中の話をしていた小林は、ふと申し訳なさそうな表情になる。

 

「大谷さんを誘って食事に行った時に、僕が大谷さんを置いて先に帰ってしまったことがあって。その時はお酒も入っていたのですが、後日、大谷さんは“小林くん、食事に誘うわりには早く帰っちゃったよね”と笑いながらチクリと言われて。あの時は申し訳なかったですね。僕はなんてマイペースなんだと思いましたね、反省です」

 

小林は、02年に映画『少年』で俳優デビュー。映画『凶悪』で注目を集め、近年では、映画『マエストロ!』、『あゝ、荒野』などに出演し、確かな演技力で観る者を惹きつけている。俳優歴16年となった小林だが、20代前半は、バイト生活でお金と向きあったこともあった。

 

「原宿にあるファミレス、夜間のコンビニ、ダーツバーで店長をしていたこともありましたね。あとは中古車販売ですかね。午前中に車が売れたら午後はプールへ行ったりもしていました。収入はよかったです。でも同時にまずいなとも感じました。役者としての収入は僅かだったので、どうしても経済的な事を考えると役者業への熱が冷めていく自分がいたんです。このまま中古車販売の仕事をしていった方がいいんじゃないかとさえ思いました。ですが、そういった経験をしたことで、初心に帰らされたんです。自分はお金だけじゃないところでモチベーションを感じ、この俳優という仕事を選んだんだなということに気づけたんです」

 

お金の価値より、俳優の価値を選んだ小林の活躍に今後も期待!

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