「レディの条件? ラーメンやギョーザもある定食屋さんにも高架下の焼き鳥屋さんにも行くけど、フレンチレストランでは恥ずかしくない振舞いができて。品があってユーモアもある女性でしょうか」
こう語るのは、数々のミュージカルで主役を演じてきた別所哲也(52)。今回は名作『マイ・フェア・レディ』(9月16〜30日、東京・東急シアターオーブにて。10月6日から福岡、広島、大阪、愛知、大分でも順次公演)で、言語学者・ヒギンズ教授を演じる。
ロンドンの貧しい花売り娘・イライザはヒギンズのもとで言葉遣いやマナーのレッスンを受け、憧れの社交界へのデビューを目指す。
「イライザに扮するのは、『レ・ミゼラブル』で親子を演じた(神田)沙也加ちゃん。今回は恋のお相手です」(別所・以下同)
作品や役、公演の時期との巡り合わせが幸運だったと別所は言う。
「年齢を重ねて、人生のいろんな経験を積んでこそ深く解釈して演じられる役柄。スポーツ選手にとってのオリンピックと似ていて、僕の年齢と公演の時期の巡り合わせが奇跡的にうまくいって、幸せです」
ヒギンズは当初、言語学の研究に没頭している。が、研究対象でしかなかったイライザにいつしか恋をする。格式や伝統、マナーを大切にする英国紳士が、対極の自由奔放で革新的な明るい彼女に引かれていくのだ。
「考えてみると、男と女ってそういうものじゃないですか。自分にないものに引かれ、相手の何かを変えることができると恋愛の醍醐味に浸れる。ヒギンズは、彼女の話し方やマナー、レディになっていく過程に自分が関わったことで火がついた。“自分が彼女を磨き上げたい”と。イライザは、負けん気が強いけどひたむきで、夢をかなえたい思いが強い。そこがチャーミングで、なんとかしてあげたくなってしまう。甘酸っぱいザワザワした気持ちから、恋心にスイッチが入るんですね」
別所といえば、毎週月〜木曜は、早朝のラジオ番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』のナビゲーターも務めている。この番組は今年、12年目に突入。また、主宰している日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」は20周年。俳優にとどまらない活躍ぶりだ。
「よく言われるんですよ、すごく忙しそうですね、って。確かに朝は4時起床。ラジオに出る僕のほかにも、台本を読んだり映画祭をとりまとめたりする“別所2号”“3号”がいたりして(笑)」