「2月最終週の週末観客動員数ランキング1位! しかも、埼玉をおもしろおかしく描いているのに、埼玉県でまさかの記録的な大ヒットという珍事に、うれしい半面、戸惑いもあったりします」
そう語るのは、二階堂ふみ(24)とGACKT(45)のダブル主演が話題の『翔んで埼玉』(東映系)で、メガホンを取った武内英樹監督(52)だ。原作は、『パタリロ!』の作者でもある魔夜峰央さん(66)が、30年前に発表した同名ギャグ漫画。
その昔埼玉県民は、東京都民から執拗に虐げられるなか、東京の名門高校の生徒会長を務める壇ノ浦百美(二階堂ふみ)が、埼玉出身の転校生・麻実麗(GACKT)に心を寄せ、埼玉解放に動きだすという、ボーイズラブあり、コメディありのストーリーだ。
「ボクも、東京から虐げられる立場の千葉県出身なので、埼玉県民の気持ちがわかるんです。原作は未完ですが、埼玉と千葉が戦う大スペクタクル感を出して、最後は手を取り合って東京に立ち向かう物語が“見えた”んです」(武内監督・以下同)
キャストからのアイデアで、台本になかったシーンも加わった。
「あるとき、GACKTさんがすごく真剣なまなざしで『ボクと伊勢谷(友介)くんのキスシーンがあったほうが、いいんじゃないかな』と提案してきたんです。“え、何言っているんだ?”って思ったけど、確かにボーイズラブは、原作にも描かれている重要な要素です」
ところが伊勢谷は「それ、必要ですか? それは……。う~ん」と、動揺の色を隠さなかったとか。
「真剣に考えた結果、2人のキスシーンが作品に彩りを与えるということで、納得してくれました。ただ、決断するまでに時間がかかっていましたけど」
埼玉と反目する、千葉解放戦線のリーダー・阿久津翔役の伊勢谷が、GACKTを縛り上げ、チラチラ見える乳首を責めながら、キスに臨んだ。
「現場は異様な緊張感で、女性スタッフたちが集まって2人を凝視していました。ボクが『カット!』の声をかけると、伊勢谷さんは『あ、女性とするのとあんまり変わらなかった』って笑いを誘っていました。多分、彼なりの照れ隠しもあったんでしょうね(笑)」
公開から3日で、すでに25万人を笑わせた『翔んで埼玉』。
「理屈なく楽しめるし、郷土愛や耽美的な要素もちりばめられています。ぜひ、ご観賞ください」
そう武内監督が自信を見せる本作の裏には、“真面目にふざけた”俳優たちの汗と涙と、ボーイズラブがあるのだ。