「オファーをいただいたとき、映画初主演だと真っ先に言われたんですけど、自分のことを俳優だと思ってなかったので喜びというよりピンと来なくて。なんで今、自分が主演なんだ? って」
そう話すのは『関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅』など、NHK BSの紀行番組で国内外を旅する関口知宏(46)。俳優としても活動してきたが、映画『波乗りオフィスへようこそ』(4月5日イオンシネマ徳島、19日有楽町スバル座ほか全国順次公開)が初主演となった。
「もう、鉄道の旅が始まった時点で俺は俳優じゃなかったんじゃないのぐらいに思っていたので。監督にオファーの理由を尋ねると、『徳永(主人公)は巻き込まれる人ですから』と説明を受けて。自分も巻き込まれ型なので、監督は俺をわかってる! と思いましたね。じつは旅人も巻き込まれた感じの流れで始めたんです。だって、俺、信じられないかもしれないですけど、旅行嫌いだったくらいですから(笑)」
’04年よりスタートした鉄道紀行シリーズの始まりは、関口の本心と逆のところから始まったという。徳島県美波町で「働き方改革」「地方創生」に取り組むこととなる本作の主人公・徳永も、高い志を持ち故郷にUターンしたわけではなく、やむをえずの流れだった。その徳永の姿に自分が重なったようだ。
撮影中気をつけたことを聞くと、「作品の中で自分が浮かないよう」注意を払ったと話す一方で、こんなユニークなエピソードも。
「現場では監督の指示を守って、主演だからとリーダーらしいことはこれといってしませんでしたけど、マイクロバスをレンタルして、撮影が終わったあとに皆を街中に連れてご飯を食べに行ったりはしました。だから撮影が押してくると、“食事の予約時間に間に合わなくなっちゃう”“マイクロバスの返す時間に間に合わなくなる”って。どこに力を入れてんだ、みたいな(笑)」
そう言って、屈託のない大きな笑顔を見せる。終始、飾らず自然体でいる関口の今後の夢を聞いてみた。
「長年の経験からすると、『こうしたい』と自分の願望を言ってそれがかなうタイプじゃないみたいなんです。いくらでもしたいことは言えますけど、そのとおりにならないから。ただ、鉄道の旅で学んだことは多くて、これまでの旅の膨大な経験でわかったことを情報として伝えたほうがいいのかなとは思います」