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七曲署の“マミー刑事”を演じていた長谷直美さん(63)。私生活でも39歳で結婚し、フランスで子育てに専念していたが、54歳で離婚。その日からまた女優に戻ることを決意する――。

 

「『太陽にほえろ!』の“ゴリさん”こと竜雷太さん(79)。当時は、近寄りがたい雰囲気を醸し出していて怖かったんですが、今回の撮影ではとってもおだやか。『直美、久しぶりだなぁ、元気か?』と、ニコニコ顔で迎えてくれました。一方、DJ役・西山浩司くん(58)は、かつてのコミカルなイメージとちょっと違って、なかなかシブい性格俳優になっていた(笑)。あれから30年以上たったいま、こうして再び映画で共演できたのが、何よりうれしい。みんな元気でいるからこそですね」

 

満面の笑みを浮かべて話すのは、女優・長谷直美さん。伝説のテレビドラマ『太陽にほえろ!』シリーズに“マミー刑事”こと令子役で出演したほか、『俺たちの朝』など多くの人気作品に登場している彼女だが、映画『悪い女はよく稼ぐ』(6月8日公開)でキャリア45年目にして、初の主演を務める。

 

長谷さんの、女優としてのキャリアの転機は、出産・結婚だった。

 

「幼なじみで、フランスに留学してそのままフランスに住み、ポルシェ関連のコンサルタントをしていたのが、主人です。’95年7月に39歳で長女を出産後、12月に婚姻届を日本で提出。フランスで新生活が始まりました。母になったときに決めたのは、『10年間は、母親として、娘にすべてを捧げよう』ということ。フランスでは、子どもが10歳になるまでは、1人で外出させてはいけない法律があるんですが、文字どおり、片時も娘から離れない生活をつづけたんです」

 

そんな、異国の地での幸せな親子3人の暮らしだったが、夫婦の間にはいつしか溝ができ、’10年に離婚となる。長谷さん54歳、長女の寧さんが高校1年生のときの決断だった。

 

「離婚の原因は、一言で言えば、『価値観の違い』です。長年連れ添ったけれど、結果、そうなった。たとえば、生命保険の購入を考えて主人に相談したとき、『なんでボクが死んだ後に、お金を残さなきゃいけないの?』というのが彼の考え方だった。人から見れば『そんなことで?』と思うかもしれませんが、なにかにつけて“大きく違う”ことに気づいたんです。そして「これじゃあ、娘を守れない」と思った」

 

母になって以後、「すべては娘のために」と女優業を封印して母親業に専念してきた長谷さんにとって、夫の考え方は、無責任に映ったのだ。しかしいざ離婚というとき、15歳の娘が選択したのは「父親と暮らす」ことだった。少しうつろな目線で、長谷さんは振り返る。

 

「愕然としましたね。出産してからその日まで、『子どものことを何から何までやってきたのは私だ』という思いがありました。学校の送り迎えはもちろん、私も一緒にフランス語を習得しながら全教科を勉強していたので、2倍の時間がかかります。算数には公文式も加えて、かなり厳しい姿勢で机に向かわせていました。私としては娘が“言葉の違い”で勉強が遅れてしまったり、イジメにあったりしないようにと心配だったのですが、今思えば、損な役回りだったと思います」

 

そのかいあって、寧さんは小・中学校でクラスのトップの成績となり、クラス委員も務めた。

 

「でも父親は気楽な立場。娘に、ただ甘い顔をして、何でも買い与えるような人でした。15歳の娘にとっては、父との暮らしのほうが“楽しい”と映ったんでしょう。私は『いつかはわかるときが来るから』と言っただけで、それ以上、弁明はしませんでした……」

 

アクションもできるアクティブな女優として活躍してきた長谷さんは、「言葉より行動」で、最愛の娘に伝えようと思った。

 

「そのために自分の仕事を究めなければと思いました。現地で女優をするなら英語の習得が必須。私はロンドンに渡り、演劇学校で英語と芝居を学ぶことにしたんです」

 

その1年間は、「人生でいちばん、頑張った日々だった」と目を見開いて説明する。

 

「12時間以上は勉強しましたね。学校では、通常授業の後に、発音の勉強をオプションで追加してもらいました。歩いて移動するときも、イヤホンでヒヤリングしながらでしたし。授業料は年間200万円以上。慰謝料なしの離婚だったので、日本の友人に頭を下げてお金を借りました。シェアハウスに住んで、1日5ポンド(=700円ほど)で、やりくりしながらの生活です」

 

映画『悪い女はよく稼ぐ』は、監督をはじめ『太陽にほえろ!』の元スタッフや出演者たちが大勢関わっているということで話題のサスペンスフルなアクション。

 

「『太陽にほえろ!』のメンバーも、裕次郎さん、松田優作さん、地井武男さん……。何人かがすでに亡くなっています。その分まで、私が元気で生きなきゃって」

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