「(映画初主演について)周りの方がいろいろおっしゃってくれるほど、そんなに本人は意識してないです。最近“バイプレーヤー”なんて呼ばれたりしますけど、その言葉自体、あのドラマ(『バイプレーヤーズ』’17年・テレビ東京)をやることになって、初めて認識したくらいで。だから、初主演になにか感慨がありますかって言われても、ないに等しいんですよね」
10代のころから役者を志し、キャリアを積み重ねて、芸歴はすでに30年以上。ヤクザや刑事、孤高にグルメを楽しむ輸入雑貨商など、幅広い役柄を演じてきた松重豊(56)が、映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』(10月4日公開)では、男の妊活に挑む小説家を好演。本作が映画初主演となる。
主役として現場で意識したことは?
「『孤独のグルメ』を続けるなかでも思ってるんですけど、現場のコミュニケーションが円滑に取れていることが、やっぱりいちばん大切なんじゃないかな。殺伐とした雰囲気には絶対したくなかった。昔は、監督さんが怒鳴り散らすようなこともたくさんありましたけど、そういうの嫌だなって思いながら育ってきましたしね」(松重・以下同)
本作は、年の離れた妻・サチ(北川景子)と夫婦2人で気ままな生活を続けていくつもりだった小説家のヒキタクニオ(松重)が、ある日「ヒキタさんの子どもに会いたい」とサチが言いだして……。“男の妊活”というテーマを、コミカルに温かく描く。
ヒキタ夫妻も仲よしだが、松重自身の夫婦円満の秘訣は?
「19歳のときから30年以上一緒にいるんですけど、ずっとくだらない会話のキャッチボールをしてきたなっていうのはあるんですよ。ニュースを見ながら『ヤバいね、この台風』『公園の木がすごい揺れてたよ』なんて、些細なことでも言葉にして相手に投げかけてみる。そうすると、ときどき心がときめいたり。たまには怒ったりしてもいいし。心が動くキャッチボールをできる関係があれば、死ぬまで一緒にいられると思うんですよね」
映画にドラマに大忙しだが、リフレッシュの方法は?
「土に触れることですかね。いつも人の目にさらされる仕事なので、どうしても気持ちがざわざわして、体とのバランスが取れなくなるときがあって。そういうときは、畑に行くといいんです。半年くらい前から借りていて。空心菜がどんどんできてるので、収穫しに行かなきゃいけないんですよ。枝豆やトマトも作っています。今は畑にいるときが、いい意味でリセットできる瞬間。畑で野菜を収穫して、カレーを作るっていうのが、いちばん幸せな休日かな。スパイスカレーにもハマっていて自分で作ったりもしますよ」