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今年も多くの偉大なスターが、たくさんの思い出をわれわれに残してこの世を去った。そんな故人と親交が深かった方々から届いた、愛あふれるラストメッセージを紹介。題して、「大好きなあなたへ 最後のラブレター」ーー在りし日の姿に、心からの哀悼の意を表して。

 

■八千草薫さん(享年88・女優・10月24日没)へ。渡辺えり(64・女優、演出家)

 

八千草薫さんに誘っていただき、私は’91年、舞台『楡家の人びと』で初めて商業演劇に出演することになりました。当時はまだ、自分の劇団の舞台にしか出ていませんでしたが、’90年にドラマで共演して親しくさせていただき「あなたはリアクションがとても上手だし、演じやすいので、ぜひ出てほしい」と呼んでいただいたからです。

 

とても狭いところでしたが、劇団3○○の稽古場での打ち上げにも来てくれました。CHANELのスーツで現れて「本当に来るとは思わなかったでしょ」とかわいく笑っていたのを今でも思い出します。私も劇団員たちも、大女優が来た! と感激しました。来てくださったうれしさもあり、楽しくなって大笑いしてビールをふいてしまい、八千草さんのCHANELのスーツをびしょびしょにぬらしてしまいました。でも、まったく怒らずに、笑っていらした。八千草さんはいつも私の話を聞いてとてもウケてくださるので、ついつい大先輩ということを忘れて親しく話してしまう人でした。

 

「商業演劇に出るようになったのは八千草さんがきっかけ。責任がありますから、いろいろ教えてください」と手紙を書いたこともありました。そんな手紙にも「わかったわ」と快く答えてくださり、よく私の舞台を見にきてくれました。去年も座・高円寺という小劇場でやった舞台を見てくださって『やっぱりえり子さん(旧芸名)が出ると華やかでいいわね』と言ってくれました。嫌なことは一切言わないし、ふだんはおっとりした優しい方でしたけど、考えていることは過激で新しかったですね。私を舞台に使おうと思ったり。

 

とても自然なので細かい演技をしてないように感じますが、卓越した技術を持っていらして、人物の暗い部分、嫉妬心など内に秘めた情熱をしっかりセリフにすることができる稀有な女優さんでした。私が優しい役を演じるときは、八千草さんの演技を念頭において演じています。

 

また共演したかったです。忙しくて八千草さんの最後の舞台に行けずに悔しい思いでいっぱいですが、八千草さんが伝えてくださったことを私の細胞のひとつにして頑張っていきます。

 

「女性自身」2019年12月24日号 掲載

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