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「殿って芸能界でそんなに友達を作らなかった人なので、いつも殿と軍団って一緒にいたんですよ」

 

ビートたけし(72)との思い出を尋ねると、「腐るほどある」と言いながら語り出すオフィス北野の現社長・つまみ枝豆(61)。

 

「昔は、お笑いの師匠は大体いい所に飯を食いに行くんですけど、弟子は『外で待っとれ』っていうのが普通だったんですよ。でも殿って全員連れて行くんですよ。『絶対食い物の恨みがあるから、俺は同じもの食わせる』って。1回、六本木の有名なふぐ屋さんで軍団全部連れていて、みんなに『好きなもん食え! 飲め!』ってなって、150何万の会計になったこともありました。後で『高かったな~』って言うから、『いや、高いだろ!』って(笑)。そんな人なんですよ。『ま、それもネタになるよ』ってさ」

 

最初の頃はたけし軍団にテレビ局からギャラが出てなかったという。

 

「殿が無理に入れ込んでくれていたので、自分のギャラから僕らに支払ってくれていたんです。しかも、殿は自分を犠牲にして僕らを守ってくれたことが何回もあるんです」

 

あるとき、たけし軍団の収録が行われるスタジオで、たけしが1本の釘が落ちているのを発見。するとたけしは釘を拾い上げ、『これなんだ? こんなもん落ちてるところで俺の若い奴らに危ないことはやらせられねえ』と激怒し、そのまま撤収したのだという。

 

「セット組んで全部準備した後で、たぶん1千万、2千万の損害だと思うんですが、その責任を殿が全部負わないといけないのに、みんなに『おう、帰るぞ』ってひと言。内心、『いやいやいや』って焦りましたけど、プロデューサーの方がもっと焦ったでしょうね……」

 

一時、たけし軍団は業界内で『お前ら金魚のフンだろ』と陰口を言われてたこともあったという。

 

「そりゃそうですよね。殿にくっついて仕事もらってる部分もあったんだから。でも、殿が『オメエ、何にもわかってねえな。俺とコイツらは持ちつ持たれつの関係があるんだよ』って言ってくれて。それが本心か嘘かわからないけど(笑)、僕らは『やっぱり付いて行こう』って思いますよね。ちょっとやそっとじゃ絆は崩れはしないですよ。逆に、僕らからしたら『僕らが返したことあったかな?』って思うんですけどね。でも、殿は僕らに対して『俺のおかげ』って1回も言ったことないんですよ。殿からしたら『みんなそうやってきた』からだって。全員がそうやって誰かのおかげで上がってきて、誰かのおかげで生活できたと。だから上のやつが『誰のおかげだと思ってるんだ』っていうのは反則だっていう人なんですよ。そんな人だからみんなついていくんですよね」

 

ダンカン(60)が若い頃、コンサートに遅刻してきたエピソードも、たけしという人物を物語っているのだとつまみ社長は話す。

 

「ダンカンとユーレイ(柳憂怜)が遅刻して、1時間ほどして来たときに『これは怒られるな?』ってみんな思ってんたんですよ。それでダンカンがバーっと走って来て『すみませんでした!』って土下座したんです。そしたら、『おお、いいよ。弁当食え』って怒らなかったんですよ。それで、なんで怒らなかったのかを後で聞いたら、『コイツらは、遅れて電車に乗ってるときどんな思いしてたかってのを考えたら、もうそれで十分なんだよ』って。『何やってんだコノヤロー!』じゃなくて。そういう人なんですよ。その感情を読み取る人なんですよね。でもよせばいいのに、ダンカンは来る途中に弁当食ってきてたんだけど、『ありがとうございます!』ってもう食えないのに弁当食ってたよ」

 

そう、懐かしそうに目じりを下げて笑うつまみ社長。

 

「でもまあ、そういう人だから、人をよく見ている。今でも相変わらず感性はすごいと思います。最終的には、『やっぱり北野武はすごい人だったね』って終わってほしいです。あれだけやってきた人なんで、僕は何をやってもいいと思ってるんですよ。でも世の中はそうはいかないでしょうし、やってもいないことを枝葉をつけて面白いから記事にするんでしょうけど、まあそういう風に僕は願ってるんです。これは殿に伝えたくないので書かないでいいですよ。『また歯の浮くようなこと言ってるよ、コイツ』って思われるので(笑)。でも、手前味噌になってしまいますが、もう二度と出てこない人だと思っています。同じ時代に生きれてよかったなって思ってるし、まして弟子でいられてよかったなって」

 

社名変更後も、師弟愛は変わらずに続く――。

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