「物忘れがひどかったけど、年のせいかなと思っていたら、認知症と言われたことは、ショックと言えばショックかもしれません。ボケたらおしまいというイメージがあったし、何もできなくなると思っていたけど、オレ自身は普通に暮らしているし、認知症はそんなに怖いものじゃないと思いました。だから街を歩いていても『おう蛭子さん、認知症になったんだったね』とか明るく声をかけてもらっても、オレは全然、構わないんですけど……」
そう語るのは、本誌連載「ゆるゆる人生相談」でおなじみの漫画家でタレントの蛭子能収さん(72)。あの蛭子さんが認知症にーー。
7月9日に放送された『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)で、記憶力が著しく衰えたことから専門医を受診した蛭子さんは、アルツハイマー病とレビー小体病を併発している軽度の認知症であることを告げられた。
レビー小体病は、アルツハイマー病に次いで、認知症の主な原因になる病気で「レビー小体」という特殊なタンパク質が大脳に蓄積して、神経細胞を破壊。認知症の症状が進む。
「いつか本当に何もわからなくなってしまうかもしれないと考えると、すごく怖くなってしまいます。でも、認知症になっても、仕事はできると思いますよ。今までも総理大臣の名前は覚えていないけど、競艇選手の名前は今でもしっかり頭に入っているように、好きなことは覚えているけど、興味がないことは流してきました。だから、正直、認知症になった実感はありません。オレにしてみれば、みんなが面白がってくれたら楽しいし、体が元気だから、働けるうちは、働きたいですね。仕事でもあまり気を使わないで、これまでどおり付き合ってくれたらうれしいですね」
漫画家、タレントと同じように、肩書として「認知症」がついたようなものだと語る蛭子さんに多くのエールが寄せられた。
とくにタレントの有吉弘行(46)は、7月12日のラジオ番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系)でも「本人がよければ復帰して元気にやってほしい」と語り、また、マツコ・デラックスとの番組『マツコ&有吉かりそめ天国』(テレビ朝日系)でも、「アルツハイマーになったらテレビ出ちゃいけないのか、仕事しちゃいけないのか、何にもできないのかということになるもんね。一生懸命やってほしい」とコメント。
「有吉さんは、テレビの世界での昔からの仲間。オレを気にかけてくれていることは、マネージャーから聞いて知っています。芸能界は、注目されないとどんどんヘコんで(落ち目になって)いきますが、有吉さんは毒舌だけど、オレが認知症になる前からオレを取り上げて、無料で宣伝してくれます。きっとオレのことが好きなんでしょうね。本当は会ってお礼をしたほうがいいでしょうけど、オレは話すのが苦手だから。有吉さんが勝手に話してくれて、オレは黙ってるだけでいいんなら別に会ってもいいですけど……、(マネージャーを見て)やっぱり『また会いたいな』ということにしてください」
頭をポリポリしながら笑顔を見せる蛭子さん。’25年には65歳以上の5人に1人が認知症になるといわれ、認知症の人が当たり前にいる社会が目の前にある昨今。蛭子さんが働き続ける姿は、認知症の人やその家族に勇気を与えるかもしれない。
「漫画家仲間の根本敬さんは『これからは100号とか大きな絵を描いてみたら』とアドバイスをしてくれました。面倒くさいということはないけど、絵を描くよりも、ギャラがよくて、楽に稼げるテレビの仕事がしたいです」
認知症であろうがなかろうが、蛭子さんは、蛭子さんだった!
「女性自身」2020年8月18日・25日合併号 掲載