「最近の作品のなかでも『鬼滅の刃』はハマった作品のひとつです。『週刊ジャンプ』(集英社)の連載時から欠かさず見てきましたし、アニメは2周見ています」
まるで書店のように、漫画がずらりと並んだ本棚がある自宅でそう話すのはNON STYLEの井上裕介(40)だ。
10月16日に公開された映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が空前のヒットを記録している。公開3日間で興行収入46憶円を超えた。「漫画・アニメ好き」を公言してきた井上が、作品のヒットの理由、見てない人でもわかる作品の魅力を教えてくれた。
■自粛生活がヒットを後押し
「新型コロナウイルスの流行で行われてきた規制が緩和され、多くの人が外に出るようになったタイミングでの公開でした、感染拡大で、ふたたび自宅にこもらないといけないという不安もある。だから今行けるうちに行きたいという人が多いんだと思います」(井上・以下同)
今年上映予定だった『エヴァンゲリオン』『名探偵コナン』『るろうに剣心』などのアニメ映画や漫画原作の実写映画の公開が来年に延期された影響も大きいという。
「ほかの作品をあまりやってなかったので1つの映画館で1日42回上映みたいなことができたということもあります。さらに、ほかのアニメ映画が見られない状況で、アニメファンの“アニメを映画館で見たい”という思いが爆発したことなど、いろんな要因がヒットの後押しになったんだと思います」
とはいえ、「作品が持つ力がいちばんのヒットの理由」と断言する井上。作品の魅力を聞いてみよう。
■主人公の葛藤が作品に深みを与えた
前出のとおり、映画は『少年ジャンプ』で連載されていた漫画を原作としている。連載開始直後は、井上はあまり期待していなかったという。『ジャンプ』には人気順に漫画が掲載されるが、連載開始直後は雑誌の“後ろのほう”が定位置だった。
「ジャンプで始まったころは、『打ち切りになるかも』という感じでした。でも、鬼を倒すための集団である鬼殺隊に竈門炭治郎が入り、キャラクターが増えてきたところから、グッと面白くなった」
回を追うごとに掲載順も上がり、『ジャンプ』の看板漫画に……。
「炭治郎は鬼殺隊という鬼を殺す集団にいながら、鬼になってしまった妹を守らなければならない。つまり、炭治郎は鬼殺隊の仲間と鬼の中間に立っているという構図ができました。だから鬼を倒した後でも、炭治郎からは本当はその鬼も救いたかったという気持ちが消えない。炭治郎がさまざまな思いを背負うようになってから面白くなってきたと思います」
■女性ファンつかむBLっぽさも魅力
炭治郎と常に行動をともにしている鬼殺隊の同期である我妻善逸と嘴平伊之助とのかけ合いも作品の魅力だ。
「本当は炭治郎は戦うことが嫌いで、善逸や伊之助とふざけ合ってることが好き。そんな日常をコミカルに描くことで戦いのシリアスさが際立っているんだと思います」
BLっぽいのりも女性人気の理由だと井上は分析している。
「伊之助が超男っぽくて、善逸は情けなくて、その中間にいるのが炭治郎という感じ。たとえば炭治郎と善逸があぜ道を歩いているときに、おにぎりを半分に分けあうところとか、デートっぽかったりする」
「友情」という言葉だけでは片づけられない少年たち3人の深い関係が、暗い世界に彩りを与えているのだ。
(取材・文:インタビューマン山下)
「女性自身」2020年11月10日号 掲載