■「第1話のリアル感に本当に驚きました」
――ドラマ化の話を聞いて、豊田先生の率直な感想をお教えください。
「昔からドラマが好きだったので、自分の作品が実写化する事はとても嬉しかったのですが、まさかこの作品でなんて夢にも思わなかったです。最初に知らされた時には担当編集さんがサプライズをしてくださったのですが、事態がまったく飲み込めなくてキョトンとしていました(笑)。正直BLの実写ドラマ化自体、前例が少ないこともあり、楽しみでもあり不安でもありましたが、スタッフもキャストの皆さんも思慮深い方ばかりで、本当に丁寧に各方面に気を配りながら作ってくださったなと思います」
――ドラマになった「チェリまほ」で、赤楚衛二さんや町田啓太さんを中心とした出演者の演技はいかがでしたでしょうか。
「初めて第1話を見たとき、漫画そのものというよりも、キャラクターの魂を持つ人間が現実社会にいたらこうだろうなと思わざるを得ないリアル感に本当に驚きました。
安達を演じる赤楚さんは自分に自信がない猫背の青年が、初めて人に好意を寄せられて戸惑いながらも、回を追うごとに変わっていく様子をとても繊細に演じてくださいました。黒沢と恋をしていく中で変わっていく安達の、言葉で説明できない空気のようなものや愛らしさをお芝居で表現してくださったことに、本当に感動しました。何気ない仕草一つとっても、第1話と黒沢と付き合った以降の第8話では全然違いますし、どちらも愛さずにはいられない魅力がありました。安達は恐怖を感じながらも一歩踏み出すシーンがとても多いのですが、それを大袈裟ではなく応援せずにはいられないきらめきと初々しさを持って、毎回毎回違う表情を見せてくださいました。そんな魅力的な赤楚さん演じる安達だからこそ、見ている側も皆応援したくなるし、見守りたくなったのではないかなと思いました。
黒沢を演じる町田さんは以前別の作品で拝見していて、その時にコメディに振り切った時の思いきりのよさと、それでもブレない品の良さが素敵だなと思っていました。そんな期待を100倍くらい超えたお芝居に、毎回オンエアを見るたびに戦慄していました。コミカルな部分だけでなく、実際に町田さんが演じられてより強く感じたのは、黒沢の人間らしい葛藤や切なさでした。安達を見つめる愛情に満ちた目線や深く息を吐きだす体の動き、恋愛に苦しむ一人の男としての生々しさを全身で体現してくださって、何故こんなに黒沢を深く解釈出来るのか、作者ですが知りたいくらいでした。
草川さん演じる六角はチャラそうに見えて友情にあつく、古い体制に対してバッサリ切り捨てる格好良さ、人懐っこくてグイグイ来るのに全然憎めない可愛さを兼ねた後輩で、本当に素敵でした。スピンオフの六角編が面白すぎて、もっと六角の話を描いておけばよかったなと思ったくらいです。
ドラマのオリジナルキャラクターの豪快で憎めなくて父性溢れる浦部先輩も素敵でしたし、藤崎さんは原作と設定は違いますが、藤崎さんの存在で救われたという読者さんも沢山いて、佐藤玲さんに藤崎さんを演じていただけて本当に良かったなと思いました。
口は悪いけど夢にひたむきで少し小悪魔な湊も、普段の挙動不審な可愛さと、包容力のある格好良さが奇跡の両立をしていた柘植も大好きで、スピンオフをまだ見てない方がいらしたら、二人のその後を是非見て欲しいです」