■芸能界に入ったら目立てるかもしれない
特技を見つけられなかった大学時代、オーディション雑誌で、お笑い芸人の新人ライブのオーディションがあることを知った。
「お笑いが何かもわからないまま、芸能界に入ったら目立つかなっていうだけの理由でした。でも当時は女性芸人が珍しかったので、すぐにステージに立てたんです。勘違いして“とんとん拍子で売れるかな”って思ったけど、まあ、スベる、スベる」
10年間は居酒屋でバイトをしながらの貧乏芸人生活。長いトンネルの中で、自分の“個性”を追い求めた。
「そこで行き着いたのが、ムチを片手にボンデージ衣装に身を包んだSMの女王様キャラと、その姿のまま、ブレークダンスの練習で培った三点倒立をする“犬神家”という一発ギャグでした」
“トットちゃん”の影響で“個性とは”と意識する機会が多かったことが、芸人として知名度を上げる結果につながったのだ。個性を大事にしてくれた母親も、さぞや喜んだのでは?
「いえ、ぜんぜん。私のSM女王姿に愕然としていました。“キャラ作り”であることを理解してもらえず、『ムチを振り回すな』とか、『露出がはげしいからカーディガンを着なさい』とか、電話でイチイチ指摘してきて。まさかトットちゃんを読んで、SMに行き着いてしまうとは思っていなかったんでしょうね(笑)」