「先生も103歳まで生きそう、と…」66歳年下秘書が語った寂聴さん最後の日々
画像を見る 瀬尾さんの長男を嬉しそうに抱く寂聴さん(瀬尾さん提供)

 

■9月に風邪をこじらせて肺炎で入院

 

今年5月に掲載された本誌のインタビューでも、新しい長編小説の構想を温めていることなど、100歳への意気込みを語っていた寂聴さん。だが体調に異変が生じ始めたのはこの9月だったという。

 

「風邪をこじらせた肺炎で入院したのです。以前の元気な先生であれば風邪をひいても、風邪のままで治っていたものが、入院という事態になったことに少し不安を感じたことは確かです。『これからは熱が出たり、ちょっとした体調不良があったりしたら、いままで以上に注意しなければいけないな。先生もそういった年齢になったのだな』と、さらに気を引き締めました。

 

それでも9月の入院は、これまで経験してきた入院と同じような感じで、特に緊迫感はありませんでした。先生は大のコーヒー党で、『飲みたい、飲みたい』と言いますから、病院に行くと必ずコーヒーを入れていました。それにシュークリームを添えて出すと、喜んでくれたのです」

 

人に会うのが大好きだった寂聴さんだが、コロナ禍のなかで、人と会うことも2年間控えていた。そんな寂聴さんを楽しませていたのが、瀬尾さんの長男の成長だったという。

 

「今年12月に2歳になるのですが、息子はしっかり意思表示をするタイプのようです。最近の先生はリハビリで廊下を歩くのも面倒くさがるほどでした。でも息子は寂庵に遊びに行くと、そんな先生を小さな手で引いて連れ回していました。

 

台所にある椅子に座っていた先生を、応接の和室に連れていったり、先生の寝室に連れていったり……。いつもだったら『もうしんどいよ~』と言って嫌がったでしょう。でも先生は息子といっしょだと、お互いを支えるようにしながらうれしそうによく歩いていましたね。

 

先生は『この子、私に命令してくるんだよね』と、言いながらも、『すごく意思がはっきりしている』『この子は生きぬく力を持っている』と、いっぱい褒めてくれたのです。だから9月に入院したときも、よく息子のことが話題になっていました。毎日話すのは、息子がいつしゃべり始めるかということ。先生は息子とおしゃべりすることも楽しみにしてくれていたと思います。

 

これは先生が一度退院したときの話なのですが、息子にこんなふうに話しかけていました。『ママが早く2人目の赤ちゃんを産んでくれて、あなたがお兄ちゃんになるといいね』と――」

 

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