「面白い、この方(渡辺えり)が。最高よ。笑う、もう私も」
そう相好を崩すのは波乃久里子(76)。弟の故・中村勘三郎(享年57)の親友、渡辺えり(67)と、9月4日(日)14時と16時半から東京・三越劇場で行われる朗読会『対の人形』で20年ぶりの共演を果たす。物語は『東京ストーリーテラー』の久間勝彦が2017年に書き下ろした朗読作品だ。
幼い頃に別れ別れになった双子の姉妹。片方は海産物の仲買をしている大店に養女として迎え入れられ幸せになるはずが、家に実子が誕生した瞬間から邪見にされ奉公に出され、それ以降は男に騙されるなど不幸続きで、晩年死の直前に介護施設に運ばれる。そこで出会ったのは施設の園長になった双子のもう一人であった。2人は最後まで再会に気づくことなく別れるが、それぞれ持っていた対の人形もしかり、並べてみても一目では見わけの付かぬほど片方は変わり果てていた……。
波乃が演じるのは生き別れになっていた双子の姉妹、房代と登美子の2役。渡辺は、その他の登場人物10人をすべて1人で演じきるという芸達者ぶりを見せつける。「この方は弟の一番の親友」と波乃が言うと、渡辺は「引き受けたのは(波乃と)芝居で会話がしたかったからだったのに、稽古してみたらあんまり会話がないの……」と残念そう。先輩への憧憬の念をにじませた。
相手を突き飛ばした一瞬の出来事が思わぬ方向に展開してしまう。実生活で妹がいる波乃は、「女の姉妹(きょうだい)って怖いわよ」と盛り上がった。
8月23日に初めて行われた稽古でも、20年間のブランクをまるで感じさせない、息ピッタリの相性の良さを披露した。そんな2人のエネルギーの源は、贔屓のイケメン俳優を見ることだと口を揃える。
「下北沢でこの方のお芝居を観て、感動してその足で大好きな高橋一生さんの1人芝居に行ったら、偶然えりさんに再会して。すごかった。ブロードウェイの舞台を観ているみたいな斬新なステージでした」(波乃)
波乃は、高橋一生(41)以外にも、最近の“推し”俳優に、小栗旬(39)、綾野剛(40)、佐藤健(33)、星野源(41)、坂口健太郎(31)らの名前を列挙した。
渡辺のオススメは、映画にもなった“チェリまほ”に出演した町田啓太(32)だ。
「美輪明宏さんと松田優作さんを足して2で割った感じ。顔立ちとか。技術じゃなくて内面で人を愛する演技が素晴らしい。赤楚衛二くんを愛するその表情が好きで、ドラマのときは毎週テレビの前で胸をときめかせていました」
朗読会の後には四半世紀以上にも及ぶ2人の交流の深さを垣間見せるアフタートークも開催する。
「久里子にえり子(当時の芸名は渡辺えり子)でしょ。だから弟は“りこ軍団”が来やがったって(笑)」(波乃)
「久里子さんは潔癖症じゃないですか。私はグチャグチャ」(渡辺)
そんな対極的な性格の2人だが、渡辺が結婚するまでは毎年中村家で年越しをしていたという家族ぐるみの付き合い。朗読劇では故・勘三郎さんとの仰天エピソードも初披露するというから、さらに注目が集まりそうだ。