■子どもの教育だけでも格差がない社会を
仕事に復帰してからも、家庭との両立は《思っていた以上に大変》だったと語っている。
《特に下の子が生まれた後の数年間はどうやって育てていたか記憶もないくらい無我夢中でした》(『週刊現代』’18年9月1日号より)
《子供が赤ん坊の頃は、現場に搾乳機を持っていっていました。ワンシーン撮り終えると、胸がパーンと張るので、搾乳して冷凍庫に入れて》(『婦人公論』’16年10月号より)
多忙を極める母親生活が始まって以降、板谷さんも出産した友達には連絡をするようになった。
「時々LINEしたり、おいしい食べ物を送ったり……。ママ友に本当に助けてもらったので、私も、身近な人には踏み込んでいきたいです。また、自分ができる範囲で、身近な人のことを、優しい気持ちで見ていたいと思うんです。『助けて』と言われなくても、何かSOSの信号が出ていないかとか。うるさいと言われても、人様のことにも少しは首をつっこんでもいいかなって思ってます」
そうした少しの関わりが、板谷さんのときのように、孤独を感じている誰かを救うかもしれない。
映画は、現実の事件とは、違うラストを迎えることになるが……。
「本当に苦しんでいる人は、映画館に来る余裕はないはずです。だから映画を見た人が、少しでも周りの人に気を配ってみてほしい。
私たちは、理不尽なことに怒っていいし、助けを求めていい。そして、つらいときは遠慮せずに、自分の思いを誰かに打ち明けていいと思うんです。また、映画でもあったように、非正規雇用をはじめとした格差は大きいと思いますが、一人の母としてはせめて子どもたちの教育の格差だけでもなくなってほしいと心から思います」
力のあるまなざしでそう語った。
【PROFILE】
板谷由夏
’75年生まれ。福岡県出身。女優やモデルとして活躍
(ヘアメイク:結城春香/スタイリスト:古田ひろひこ/衣装:SINME)
配給:渋谷プロダクション
制作会社:G・カンパニー
(C)2022「夜が明けるまでバス停で」製作委員会
10月8日(土)より新宿K’s Cinema、池袋シネマ・ロサ他全国順次公開