■“ダークな時政”が現れると俳優仲間に怒られる(笑)
コロナ禍まっただ中の撮影。
現場では、さまざまなことに腐心する必要があったという。
「スタジオの中では全員、常にマスクをしたまま。本番直前に衛生班と呼ばれる人たちがやってきて、出演者全員のマスクを回収。本番が終わると、また新しいマスクを配ってくれるんです」
そんな苦労のかいあって、ドラマは大好評。歌舞伎界の役者仲間にもファンが多いそうだ。
「時政のダークな面が現れてくると、歌舞伎座の楽屋ですれ違う俳優さんたちに『なんですか、昨晩の時政は!』と怒られたり(笑)」
冒頭のコメントにあるとおり、彌十郎家でも毎週欠かさず“時政チェック”が行われている。
時政が、宮沢りえ演じる策略家の後妻・りくと抱擁するシーンが流れると……。
「『まったく! 若い女房にメロメロなんだから!』なんて。それをカミさんから言われるんですから、おかしいでしょ。私は真面目に芝居しているだけなのに(笑)」
9月25日放送の第37回「オンベレブンビンバ」では、久しぶりに北条ファミリーの一家団欒のシーンが描かれた。
意味不明な回のタイトルは、家族間の対立が深まるなか、それでも家族を何より大事に思う時政が唱える“いいことがあるおまじない”のこと。
かつて“孫”の大姫に教わったものだったのだが。
「正解は『オンタラクソワカ』なんですが、時政はそれを『オンベレブンビンバ』と覚え違いをしていて。訂正しようとする政子も義時も、全員が間違ったおまじないを唱える。リハーサルでは皆、噴き出してました(笑)。じつに愉快な場面ですが、でも、それが悲しく切ないんですよね。自分でもあの放送を見て、泣きましたよ」
史実ではこののち、鎌倉を追われ伊豆で余生を送ることになる時政。ドラマ終盤、私たちにどんな姿を見せてくれるのだろうか。
「追放後の時政の暮らしぶりが、チラッとでも映るとうれしいんですけどね……。はたしてどんな結末を迎えるのか、乞うご期待です」