■人前で表現する楽しさを知った『おどるポンポコリン』ダンス
当時の安田さんは、引っ込み思案で恥ずかしがり屋。自分から目立つことができなかったが、学芸会のクラスの出し物として、『ちびまる子ちゃん』の主題歌、『おどるポンポコリン』の創作ダンスを披露したことがある。
「詞の意味はよくわからなかったけど、ものすごく楽しい曲。ふだんはステージに立つタイプではないのに、このときばかりは自分でも驚くくらい堂々と踊ることができて、母に『よくがんばったわね』とほめてもらいました。クラスの友達と仲よくなるきっかけにもなり、人前で表現する楽しさを知る、初めての経験でした」
中学生になると父親の転勤も落ち着き、中・高の6年間はバスケ部に所属。
「かなり影響を受けたのはアニメの『スラムダンク』(’93~’96年・テレビ朝日系)。バスケをやっていたから、主人公の桜木花道がやっていた“ふりむきざまシュート”を、部活で試してみたり。もともと少年漫画ですが、マドンナ的存在の晴子さんがすごくかわいくて、胸キュン要素もあったから、女子にも人気でした。主人公のライバルで、クールな流川楓もかっこよくて、すごく似ている同級生に一時的に恋心を寄せていたことも」
エンディングテーマの大黒摩季の『あなただけ見つめてる』(’93年)、WANDSの『世界が終るまでは…』(’94年)、ZARDの『マイ フレンド』(’96年)も思い出に残る曲だ。
「ZARDの『君に逢いたくなったら…』(’97年)も、よくカラオケで歌っていました。美術の授業で、この曲をイメージしたCDジャケットを作る課題があり、グラデーションをつけた夕日を描いた作品を作ったら、先生にすごくほめられました」
短いスカートにルーズソックスをはいて、放課後はカラオケボックスで歌うという、ごく普通の“’90年代女子高生”だった。
「雑誌『mc Sister』(婦人画報社、現ハースト婦人画報社)のモデルをしていたはなさんがかわいくて、私も応募しようと思ったら、身長が足りなくてあきらめました。何か自分で表現したいと思いだしたのは、そのころくらいから。大学生のとき、友達を京都案内していたら、たまたま東京の芸能事務所のスタッフさんからスカウトされたんです」
相変わらず、安田さんは恥ずかしがり屋で、人前で話すときには緊張してしまうタイプ。
「それでも芸能界の仕事に挑戦してみようと思ったのは、心の奥にはアクティブな自分もいて、人前に出る仕事への憧れがあったから。その原点が、小学校の学芸会で披露した『おどるポンポコリン』のダンス。そのときの成功体験が、今振り返ると、芸能の仕事につながる貴重な体験になりました」
【PROFILE】
安田美沙子
’82年、北海道生まれ。その後、大学生まで京都で過ごす。20歳のときに「ミスマガジン」に選ばれてデビューする。『アッコにおまかせ!』(’85年~・TBS系)や競馬番組など多くのバラエティ番組で活躍。’21年に念願だったランニングアドバイザーの資格に合格