――稽古はどういう風に進められたのでしょうか?
「まず、僕らやスタントマンが実際に動いてビデオコンテを作ります。佐藤嗣麻子監督からOKがでたら、今度は役者さんに見せて教えます。ワイヤーなど、特殊な技術が必要なものもあるので、山﨑さんに練習していただきました」
――山﨑さんが「重力を感じさせないアクション」とおっしゃっていたシーンですね。ちなみに、監督が“羽生さんから着想を得た”という話を山﨑さんにされたときは、どんな状況でしたか?
「さっき話したビデオコンテを山﨑さんに見ていただいたときに、実は山﨑さんのほうから質問されたんですよ。僕が言う前に、映像を見て『これ、羽生さん意識してますか?』って」
――山﨑さんが気づかれたんですか!
「そうなんです。山﨑さんも『SEIMEI』は覚えていたんだと思います。『よくわかりましたね』と話しました」
――どこをご覧になってそういう風におっしゃったんですか?
「全体的にだと思いますね(ビデオコンテを見せながら)」
――たしかに、本当にアイスリンクの上で動いているみたいですね。フィギュアのスピンやイナバウアーに似た動作もあります。山﨑さんは他になにかおっしゃっていましたか?
「こんなに大変とは思っていなかったみたいで、『台本よりもアクション多いんですね』って驚いていました(笑)」
――こういうのは1日どのくらい稽古をするものなんですか?
「休憩を挟みつつ、3~4時間やっていました。撮影と並行して、その合間を縫って2カ月間練習しましたね。2年前のことなので正確には覚えていませんが……。
その日、ビデオコンテを見て、お互いの共通認識はもう固まったんですよね。山﨑さんは、『キングダム』や『ゴールデンカムイ』など、どちらかというと感情を表に出すようなアクションが多かったんですけど」
――感情を爆発させるような感じですね。
「はい。今回はミステリアスなアクションで、質が違ったので、『ちょっとギアを変えないとな』と言っていました」
――すごいですね。やっぱりそういう風にお考えになるんですね。なにか、園村監督から注文されたことはありますか?
「『あまり感情が出ていないように見える動きで』とは常に言っていました」
――難しそうですね。
「そうなんですよ。身体は躍動感が必要ですが、感情は抑えなきゃいけないという、すごく難しいことを。それに多分、呪術は指の形まで結構細かいので、指先まで気遣いながらやっていたと思います」
――そこもフュギュアスケートのようですね。
「はい。似てる感じがすごいしましたね」
――撮影のためにやっぱり体を鍛えたりとか?
「していると思います。陰陽師にはない動きなんですけれども、うちのスタントマンを捕まえて、自分でミットとグローブを持ってきて、休憩時間にミット打ちとかやっていました。遊びの延長ではあるんですけど、『ちょっとパンチ教えてください』って」
――練習でもあり遊びでもあるんですね。
「体を動かして、身体操作のスキルを上げたいのだろうと思います」