「もともと色白で、夏でも日焼けせず、赤くなって終わってしまうんです(笑)。まとまった夏休みは取れませんが、1歳半の子どもも少しずつ物事がわかってきたので、草木や虫、川や海など夏らしいことを体験させてあげたいですね」
そう語るのは、『進撃の巨人』の主人公・エレンの声を10年にわたり担当するなど、声優界のトップランナーとして活躍する梶裕貴(38)。今夏は、シリーズ第4弾となる劇場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』に出演、スクリーンでその美声を轟かせる。本作で梶が演じるのは、主人公の緑谷出久らとともにヒーローを目指す高校生・轟焦凍だ。
「当初、轟は謎の多いキャラクターでしたが、その過去や家族との物語が明らかになるにつれ、次第に人間らしさが垣間見えるようになってきました。基本的に、無口で物静かな性格ですが、天然な一面も魅力的。緑谷たちとの関わりの中で、彼が本来持つ感受性が開花してきたのかなと感じています。僕自身、序盤よりもアウトプットする声音の幅が広がってきたような気がしていますね」
また、そんな轟にシンパシーを感じるという。
「轟は、父親からスパルタ的な英才教育を受けてきたのですが、僕の家も父が厳しかったので、彼の気持ちがとても理解できました。役に共感できると、よりシンプルに、直接的に役と心を重ねることができる。役者の仕事において、想像すること、自分の経験を膨らませていく作業は非常に大事です。それらを駆使して、いかに現実味を演出できるかを追求していきたいですね」
デビュー20周年を迎えた梶が仕事をするうえで大切にしていることは、人との縁。
「オーディションに合格するというのは、並大抵のことではなく、努力だけではどうにもならないこと。コンディションやタイミングなど、あらゆる要因がそろった結果、ようやく一つの役と出合えるんです。それを考えると、もうご縁でしかないな、と。人と人とのつながりというのはとても大切で、これからも貴重なご縁をつないでいきたいなと思っています」
また、AI技術の発展に伴い、新たなエンタメ分野への挑戦を企画している。
「昨年、音声AIプロジェクト『そよぎフラクタル』を発足。オリジナルキャラの“梵そよぎ(声:梶裕貴)”を自由にしゃべらせることができるソフトを製品化しました。AIに対する向き合い方はさまざまですが、しっかりと未来を見据えて共存していくことで、より魅力的なエンタメが生まれると僕は信じています。自身の声と経験値を生かしながら、これからの10年、より積極的にチャレンジしていきたいです」
(ヘアメーク:中山芽美[emu Inc.]/スタイリング:帆苅球)