■母の通夜でも収録から全然帰してもらえず
野村 忙しくなった分、プロ意識も求められました。風邪をひこうが、ケガをしようが、必ず現場に行かなければならなかった。
野沢 何があっても「とりあえず現場に来い。それでダメかどうかはこちらで判断する」だからね。
野村 『サザエさん』は撮りだめがないから、母が亡くなったときも収録に行ったの。ちょうど母の日の話で、つらかった!「これからお通夜なんで」と言っても、全然、帰してくれなかったのよ。
野沢 私たちの時代はそれが当たり前だったから。
野村 『タイガーマスク』で、児童養護施設の少年をマコさん、児童養護施設のお姉さんを私がやっていたときのこと――。
野沢 そうそう。収録の日の前夜、家が火事になっちゃって。私、煤で着る洋服もなくて、近所の人に服を借りたんだけどサイズが全然合わない。それでもスタジオに行って、録音後に合わない服のことを聞かれて、理由を言うと……。
野村 もう、みんなびっくり!
――声で命を吹き込んだキャラクターは、子供たちに大きな勇気を与えた。
野村 病気の子供から連絡があると、大山さんが中心になって応援メッセージを送ったりして。
野沢 私も。あるとき、病気の子の親御さんから連絡があって。『ドラゴンボール』が好きで、いつも枕元に漫画本を置いてあったらしくてね。余命いくばくもないとのことだったので「オス、オラ悟空。絶対元気になって、会おうぜ。劇場で待ってるからな」とメッセージを送ると、最後、宣告された余命を超えて映画を見に来てくれたのよ!
野村 そんなことが……。アニメ作品の持つ力を感じるよね。
野沢 だからこそ、みっちゃんは声優プロダクションを立ち上げたんだろうけど、私は声優以外のことができないから尊敬する。
野村 スクールデュオという声優養成所をやって、今年で26年目。日本一の声優養成所を目指しています。マコさんは、声優界の憧れ。いまだにバリバリの現役!
野沢 これから新しい仕事も始まるし、まだまだ元気でいないと!
野村 すごいねえ。仲間を失っていく寂しさはあるけど……。元気で、お互い頑張りましょう!