■水木しげるさんの長女からの助言は、「父親のことを語り継ぐのは私たちの役目」
「うーん、難しい。どれも好きですが、一つと言われれば、『男おいどん』ですね」
牧さんに、夫の作品で好きなものを尋ねると、こんな答えが。摩紀子さんにも聞いてみると、
「母の作品は、少女漫画のころの全体的な絵のセンスが好きです。かわいらしい洋服とか、花や葉のしずくの透明感とか。
父の作品で好きなキャラは、猫の“ミーくん”。わが家には、ミーくんという名の猫は4代目までいて、いつも私のそばにいてくれる家族の一員でした」
夫を、そして父を失って、2年の歳月が過ぎた。
「ようやく最近、母とは『また旅行をしたいね』と話しています。漫画の仕事だけでなく、来客も多い家でしたので、牧も私も家から出られない忙しさでした。ですから、周囲の許しを得て年に一度、母娘2人旅をするのが近年の楽しみだったんです。
親子3人の旅ですか? 物心ついてからは、たったの一度きりです。たしか’92年に長崎のハウステンボスの開業に招かれて行きました。でも父は締切りが心配だったようで落ち着かず、私も覚えてるのは中華街で食べたチャンポンがおいしかったことぐらい(笑)」
かつては目立たないよう生活していた摩紀子さんだが、現在は表舞台に出ることも心がけている。
「5年ほど前に水木しげる先生のご長女の原口尚子さんと知り合いました。水木先生もお亡くなりになりましたが、尚子さんからは『父親のことを語り継ぐのは私たちの役目』と助言をいただいたんです。
松本自身、『自分たちはDNAを運ぶ舟なんだ』と言っていましたが、原稿の整理をしていて、父が残した作品にも、またDNAがあり“命を運んでいる”と気づいたんです。ですから、それらを大切に未来につなげていきたいと思っています」
『銀河鉄道999』と『宇宙海賊キャプテンハーロック』の連載開始50年を前にして「50周年プロジェクト」も動き始めている。今年6月からは六本木ヒルズ展望台「東京シティビュー」で「松本零士展 創作の旅路」も開催されるため、摩紀子さんもその準備で、さらに忙しい日々を送っている。
「仕事場の整理により初めて見つかった原画も展示される予定です」
愛とロマンがあふれる作品とともに「松本零士の宇宙」は、これからも無限に広がってゆく。
(取材・文:堀ノ内雅一)
