■東出を照らした養老孟司氏の言葉
先行きが不透明なまま、急速に変化していく現代社会。東出も山での生活を通して、人々の生活への変化や幸せについて思いを巡らせているようだ。
「私たちは、物心ついた頃から不景気だと言われ続けてきた、いわば“閉塞感のある世代”です。AIの台頭によって仕事を奪われる人が出てくるとか、超高齢化社会が進んで一人ひとりの負担が増えるとか、そこに近年の物価高騰も重なってくる。その背景には、もちろん日本の国力の低下がある。そうした中で、心のどこかで『この幸せな日々は、きっと長くは続かないのだろう』という予感に近い感覚があるんです。
東日本大震災が起きた’11年から15年間で、復興のために投じられた予算は約42兆円とも言われています。南海トラフ地震が起きたら、その想定額が東日本大震災の時の10倍以上になってもおかしくないと言われていて、そんな大規模な天災に見舞われた時に人々の生活はどうなるのか……。『多分社会がこのままだったら、しんどくなってくんだろうな』や『私は何を幸せだと思いたいのだろう』と考えていました」
その際に、手がかりになったのが、大ベストセラー『バカの壁』(’03年)で知られる東京大学名誉教授で医学博士の養老孟司氏の言葉だったという。
「戦争もご経験なさった養老さんが、いまの日本について“天災待ち”とおっしゃっていたんです。この言葉は、これまでの歴史のなかで節目節目に巨大な天災が発生し、そのたびに社会の仕組みが変わっていくという日本社会特有の背景を意味しています。養老さん曰く、今後起きうる大きな自然災害が物質至上主義にまみれた現代日本を変えるきっかけになるのではないか、と。
私は、東京よりも田舎に越してきた時に幸せを感じる瞬間が多くなりました。だから、もっと不便を取り入れた生活、それをさらに今後来るべき災害を想定してやっていったときに、はじめて“自分にとっての幸せ”っていうのが顕在化してくると思っていました。今回の被災生活は、自分の幸せを真正面から見つめ直す時間だったともいえるかもしれません」
“被災生活”の経験を経て、東出は次にどんな一歩を踏み出すのだろうか。
【後編】「自分で生きる力をつけたい」東出昌大 老後や報酬には興味なし…山籠り生活で気づいた「1歳の愛娘に伝えたいこと」へ続く
画像ページ >【写真あり】釣りを楽しんだ後、川辺で佇む東出昌大(他4枚)
