1978年に英国バーミンガムで結成され、以来メンバーの脱退、ソロ活動、再結成などを経て30年にわたり活動を続けるスーパーグループ、DURAN DURANが一夜限りの超貴重な来日公演を行った。
サマー・ソニック2005に出演したものの、ワールドツアーとしての単独公演は2003年以来約5年ぶり。久々に姿を現すメンバーはいかに? 一体どんなライブを観せてくれるのか? 躍る心を抑えながら、タクシーを猛スピードで走らせ会場の裏手入り口に到着すると、偶然にもこれから会場入りするボーカルのサイモン・ル・ボンに遭遇。その場に居合わせたラッキーなファンの方たちから、熱い写メ攻撃を浴びているところだった。
会場には、バンドとともに成長してきたと思われるベテランファンの方々から親子連れ、外国人グループ、またDURAN DURANを最近知ったという新しいファンまで様々な人々が大集結していた。オールスタンディングのフロアーで観客の熱気はぐんぐんと上昇し、その時が来るのを待っていた。
午後7時、ほぼ定刻通りに場内が暗転。まだ様子のわからない薄暗闇のステージにメンバーのシルエットが現われると、フロアーからは大歓声と手拍子が沸き起こった。1曲目は、昨年11月に発売されたニュー・アルバム『RED CARPET MASSACRE』から“THE VALLEY”。第一声を発したのはサイモン。「元気デスカ~、トウキョウ!」。
メンバーは皆、黒を基調とした衣装で登場。さすが英国紳士! 着こなし、アレンジにそれぞれの個性があらわれていてとてもオシャレだ。ベースのジョン・テイラーが着ているジャケットの左胸には大きな“D”のマークが入っている。ステージ右後方には、キーボードのニック・ローズ、左後方はドラムのロジャー・テイラー。二人は定位置にて変らない元気な姿を見せてくれた。前方はサイモンを中央において右にギター、左にはベースのジョン・テイラー、そのすぐ隣にはモデルのナオミ・キャンベルを思わせるスレンダーな黒人バックボーカリストが参加していた。
「エブリバディー、スクリ~ム!」の掛け声に合わせ、観客も両手を高く挙げて応える。ライブがスタートして早くも4曲目にして、全英で5位、全米で3位を獲得した名曲“HUNGRY LIKE THE WOLF”が登場。今聴いても決して古びた印象はない! いや当時以上によりロックしていて新鮮だ。
ステージ上で演奏する4人のオリジナルメンバーの姿を目の前にして、ファンのボルテージは一気に引き上げられた。長身で美形で笑顔の眩しい(今も)メンバー内1番人気のジョンが、ここでセクシーに上着を脱ぐと、その仕草にファンのハートはノックアウト! 会場のあちらこちらから「ジョン~[E:heart01]」コールが飛び交った。
名曲が惜しみなく続く。[E:note]DaNaNaNa~と始まれば、そう! 曲は“THE REFLEX”。イントロ部分が流れただけで会場内がワッと盛り上がり、観客はサイモンに代わって大合唱。ニックの肩に手をまわしたサイモンは、「今夜のオーディエンスは最高だぜ!」と確認し合うかのように二人でアイコンタクトを交わしていた。つづいて、サイモンは黒のアコースティックギターを持って登場すると、汗をかきはじめた白いシャツの腕をまくり上げステージ中央へ。個人的にも大好きな名バラード“SAVE A PRAYER”を演奏。この曲のPVにあるように、ペンライトやライターで右へ左へ揺れる光の海は、2階席からみていてとても美しく印象的だった。2008年になって、またこの曲を生で聴くことが出来るなんて・・・会場全体がこの名曲に酔いしれた瞬間だった。“A VIEW TO A KILL”は、ご存知、1985年に公開された映画007のテーマソング。と、ここで一旦メンバーがステージを去り、セットチェンジが行われた。
ステージ上にはエレクトロ仕様の4つのテーブルが並べられ、その上にはキーボードやドラムなどがセットされている。ステージを照らす強烈な光のライトがグルグルとまわり、会場内がまるでスタジアム級のダンスフロアーと化した状態のなか、メタリック素材の入った衣装に着替えたメンバーがインカムをつけて再び登場。横並びに立つその様子は、ブルーマングループのよう(?) ニックもロジャーも今度は観客から至近距離。エレクトリックサウンドにアレンジされた曲が一瞬何の曲だろう?と思いながら耳を傾けてみれば、“LAST CHANCE ON THE STAIRWAY”だ。クラシックソング集に入ってしまいそうなこの曲が、ニューヴァージョンで息を返した。かっこいい! クールにアレンジされたエレクトリックヴァージョンはこの後、“ALL SHE WANTS IS”“LEATHERETTE”“I DON’T WANT YOUR LOVE”“SKIN TRADE”“TEMPTED”とつづく。
DJタイムの様な楽しい時間の後は、サイモンとニック、ジョンの3人構成で活動していた時期に作られ、全米2位を獲得したシングル“NOTORIOUS”だ。曲に合わせてサイモンは、まるで相撲力士が四股を踏むような格好 をしておどけてみせ、会場内の笑いを誘った。ライブも終盤に入り聞こえてきたのは、カメラのシャッターを切る音に加えてギターのカッティングで始まる“GIRLS ON FILM”。セクシーな女性たちが登場し過激すぎるPVということで当時BBCでは放送禁止になったこの曲。今夜はサイモンがタンバリンを持ち、右へ左へ腰をスウィングさせながら観客を挑発していた。“WILD BOYS”はロジャーの叩き出すパワフルなドラミングの一打一打がお腹に直撃。そして「We Want More!」の熱烈なコールに応えてアンコールの“RIO”で2時間弱のショーは幕を閉じた。
以前サイモンは、雑誌のインタビューで、「(健康のため?)毎朝オレンジジュースを飲んでいる」と応えていた。そのことについて、アルバム『Astronaut』のPRのため来日した際直撃してみたところ、「今は、毎日“BEROCCA”というオレンジビタミンドリンクを飲んでるんだ」といって、上手く発音の聞き取れなかった私のためにわざわざスペルを手帳に書いて教えてくれたことがあった。今でも飲んでいるかどうかはわからないが、以前と変らないエネルギッシュなパフォーマンスで23曲、2時間弱のショウを歌いきるサイモンのパワーの源は、もしかしたらあのドリンク健康法にあるのでは?と想像しながら観ていた(笑)。現在もなお色あせず、さらには新たなDURAN DURANの魅力を再認識することが出来た大満足なライブだった。
[撮影:森リョ―タ]
DURAN DURAN @ ZEPP東京 14th April 2008
【セットリスト】
1.THE VALLEY
2.RED CARPET MASSACRE
3.NITE RUNNER
4.HUNGRY LIKE THE WOLF
5.PLANET EARTH
6.FALLIG DOWN
7.COME UNDONE
8.SKINDIVERS
9.THE REFLEX
10.SAVE A PRAYER
11.A VIEW TO A KILL
ELECTROSET
12.LAST CHANCE ON THE STAIRWAY
13.ALL SHE WANTS IS
14.LEATHERETTE
15.I DON’T WANT
16.SKIN TRADE
17.TEMPTED
18.NOTORIOUS
19.GIRLS ON FILM
20.ORDINARY WORLD
21.SUNRISE
22.WILD BOYS
ENCORE
23.RIO