イリノイ州ロックフォード出身の4人組、チープ・トリックが、このたび一夜限り限定、30年前の武道館公演再現ライブを行うためご帰還した。1978年4月、武道館で行われたライブの音源を収録し、日本国内でのみ発売されたアルバム『at Budokan』が本国アメリカでも人気を呼ぶと、その後アメリカ盤がリリースされ400万枚を超す大ヒットとなり今や誰もが知る世界的スーパー・スターとなった。
 「武道館がチープ・トリックを有名にし、チープ・トリックが武道館を有名にした」(リック・ニールセン談)の言葉のように、チープ・トリックにとって武道館は聖地のような場所。また、チープ・トリックをきっかけに武道館を目指す海外アーティストがこの後に続いた。

4月22日(火)夕方、チープ・トリック御一行様成田到着!
 一足早くロビン・ザンダー(Vo)は家族と一緒にダラスから。可愛いお嬢ちゃんをカートに乗せて登場。その30分後に、リック・ニールセン(g)トム・ピーターソン(b)バーニー・カルロス(Dr)もシカゴから無事到着。
 リックは到着ロビーでファンの姿を見つけると、かばんの中からなにやらゴソゴソ・・・出てきたのはギターピック。早速お出迎えに集まってくれたファンにむけて豆まきのごとく撒きだした。この洗礼にファンも大喜び! トムもバーニーも花束を受け取ったり、サインに応じたりと長旅の疲れも感じさせず、終始笑顔で元気な姿を見せてくれた。
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4月23日(水)武道館ライブ前日 前夜祭ならぬ全日祭(!?)開催!
0805016 リックの「30年前のチケットを持っている人がいたら会って御礼を言いたい」という一言から行われたこのイベント。集まった100人の熱烈なファンのうち、30年前の武道館チケットを今も大切に保管し、持参した人なんと50人以上! これにはメンバーお喜び! リックはひざまずき、床に平伏せてみせた(笑) 昔からファンだという吉井和哉氏もゲストで登場し、熱い思いを語っていた。アコースティックライブでは、『甘い罠』と『SURRENDER』を披露。感極まって泣き出すファンの方々続出。
 また、会場後方には、ロビン・ザンダーファミリーが座っており、ロビン譲りのブロンドヘアーを三つ編みにしたお嬢ちゃんに同じくらいのお子さんをもつファンの親子が近づいて、プレゼントをあげる微笑ましい光景もみられた。アットホームな雰囲気のなか、あたたかいイベントとなった。
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4月24日(木)チープ・トリック@武道館 24th April 2008
  伝説の公演から30年目の武道館は雨。九段下から続く道にはビニール傘やこうもり傘、色とりどりの傘の列が続き、武道館へと吸い込まれていった。中へ入ると、外からの湿気と客席からの熱気とが渦巻いてムンムンとした空気が漂っていた。1階席、2階席最前列の観客は、興奮した様子で今にもバルコニーから落っこちそうだ。
0805011 19時20分。「All Right Tokyo! Are You Ready to Rock!!」という、アルバム『at Budokan』に収録されている、あの名アナウンスが武道館中に響きわたり、ショーはスタートした。チープ・トリックのアンセムソングになっている1曲目の『HELLO THERE』は、30年前を上回るのでは? と思わせるほどの大歓声で掻き消されそうだ。ロビンは当時を思い出させる真っ白い王子様風スーツで登場。
 実は、初代のスーツはボストンで盗まれてしまったとのこと。前日の前夜祭でスーツの行方を尋ねたファンにそう応えていた。リックは黒のスーツにタイを着用。定番カラーとなっている黒と白のチェッカー柄は、足元のナイキ(スニーカー通によれば、とても高価なものだとか!?)から後ろのギターアンプに、そのまたアンプの上にちょこんとのったティッシュボックスに、おまけにギターのストラップにまでみえる! 細部にまで観客を楽しませてくれる。トムのベースは12弦。噂によると、この12弦ベースを考案し、ライブで使用したミュージシャンはトムが最初だったとか? バーニーはドラムセットにドンと鎮座して、ビートを刻む。そんなバーニーの姿は失礼ながら、電気量販店に置かれたサイレントドラムマシーンを会社帰りに無我夢中で叩くサラリーマンのようにみえる(笑)。
 かつてギターコレクションの写真集を出版したこともあるほどのギターフリークであるリックは、曲が終わるごとに、レスポール、ストラトキャスター、フライングV、テレキャスターなど次から次へとギターチェンジ。ギターキッズにはたまらないレアもののギターから(!?)ファイブネックギターまでも登場した! そのステージ右後方では、ギターテクニシャンが忙しそうにキュッキュッと磨いては次のギターの準備をしていた。
 「30年前にも観に来てくれた人はいる?」とロビンが客席に向かって呼びかけると、観客は大きく手を振り上げたり、はちきれそうなくらいの声をあげて、皆それぞれの方法で「ココにいるぜ~」とアピールしていた。そんな観客の熱気に圧倒され、ステージの温度もあがり、6曲目『BEST FRIEND』の前で、ロビンは長いブロンドヘアーを頭の後ろでまとめ、お団子のように結んで登場した。
0805012 ロビンの甘い声とトリックと言う単語の日本語から邦題がつけられた『甘い罠』では、サビのあとのお約束、♪Cryin’Cryin’Cryin’♪で武道館中が大合唱。同じ米国のロックバンドであるBON JOVIが昨年の6月、来日公演を行った際、「ちょうど20年前、1987年にここブドカンで俺たちもライブをやったんだ」と言って、『甘い罠』を歌っていた。実はボーカルのジョンは、大のチープ・トリックファンで、2001年、同じく赤坂ブリッツで来日公演中だったチープ・トリックをお忍びで観に行ったというエピソードがある。
 ギターを肩から下ろして身軽になったロビンは、観客一人一人の顔を確認するかのように、またときにはじっと一人の顔を見つめながら『SURRENDER』を歌った。そういえば、アルバム『LAP OF LUXURY』をリリースした1988年頃、TV番組のゲストとして銀座のスタジオにやってきたロビンは、顔なじみのファンを見つけて近寄ると、着ていた皮のライダースジャケットを脱いで、その場でプレゼントしていたことがあった。今夜も客席を指差して微笑んだり、アイコンタクトを交すロビンから、ファンは“甘い罠”をかけられうっとりしている様子だった(笑)アンコールに入る前、リックのギタースタンドにはさらにピックが大追加!
 バーニーのドラムセットの後ろがなんだかザワザワしてきたと思ったら、なんと、スペシャルなときにだけお目見えするという、長さ約1メートル、太さ10センチほどありそうな巨大ドラムスティックが登場。さっきまでサラリーマン風に見えていたバーニーが、この巨大ドラムスティックを手に今度はミクロキッズにみえる。なんだか可愛い~。一生懸命ドンドコドンドコ叩いていた。
080501910_2 そして最後は、リックが大量のギターピックを撒きながら、何度も何度も「サンキュー、アリガト~」と感謝の言葉をのべて、一夜限りの武道館ライブは幕を閉じた。
 チープ・トリックとファンの間だけではなく、チープ・トリックに関わったすべてのひとが様々な思い出を甦らせた同窓会的雰囲気をもったライブであった。一夜限りの武道館ということで、今夜武道館へ来ることのできなかったファンに対しても「ニュー・アルバムを完成させて、またすぐに戻って来るから」と嬉しい約束もしてくれた。
 純粋に音楽が好きだからこそ30年以上も続けてこられたとリックは語っていたが、30年前を体験していない新しいファンのためにもさらに新たな歴史を刻み続け、生涯現役バンドとして貫いていってほしい。60周年目も武道館で??としたらリックは90歳だ!

[撮影:Yuki Kuroyanagi@成田空港&武道館]
[撮影:高田太郎 女性自身編集部@前夜祭]

0805018チープ・トリック@ 武道館 24th April 2008
【セットリスト】
1.HELLO THERE
2.C’MON C’MON
3.BIG EYES
4.CALIFORNIA MAN
5.IF YOU WANT MY LOVE
6.BEST FRIEND
7.DOWNED
8.I WANT YOU TO WANT ME
9.I KNOW WHAT I WANT
10.VOICES
11.HIGH ROLLER
12.THE FLAME
13.70’s SONG
14.SURRENDER
15.DREAM POLICE
16.AUFFIE
17.CLOCK STRIKES TEN
18.GOODNIGHT

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