有名メゾンのファッションショウでランウェイを歩くモデルたちは常に美しく、そして「痩せて」いることを求められる。エージェントは時に健康を害するレベルの過酷なダイエットを所属モデルに強要し、彼女たちは血を吐くような努力でそれに応える——。

 

マーク・ジェイコブス、やイヴ・サン・ローランのショウに出演していた元トップモデルの1人、カロリン・ヴァルター(22)がそんなモデル業界の過酷な現実を<a href=”http://iloveyoumagazine.blogspot.co.uk/2012/10/to-be-given-label-plus-size-was-most.html” target=”blank”>自身のブログ</a>で赤裸々に綴っている。

 

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<カロリン・ヴァルター>

 

ドイツ出身のカロリンの身長は181センチ、モデルになる前の体重は62キロだったという。BMI値は18.92。この次点で標準体重より10キロ以上も痩せていた。2008年にエージェントと契約したときは57キロにまで減らしたが、それでも「もっと絞れ」と口うるさく言われたという。

 

「2009年、初めてのファッションウィークのときの私の体重は53〜55キロだった。これは私のいつもの体重より10キロも少ない」

 

「私は努力した。本当に頑張った。それでも、エージェントには『カロリン、次の春夏コレクションではもっと細くならないとダメよ』と言われた。今となっては信じられないけど、私自身も完全にそう思い込んでいた」

 

「普通に食べることは完全になくなった。自分が空腹なのか、何に飢えていたのかもわからなかった」

 

「鏡を覗くたびに、こんなはずじゃなかったと考えた。のしかかる重荷は毎日、重くなっていった」

 

彼女の疲労はピークに達していたが、エージェントを失望させるのを恐れ、仕事は完璧にこなしていた。そのしわ寄せはプライベートな生活を脅かし、大きな仕事の前になると、精神的な圧力に押しつぶされ、自宅では何もすることができなくなっていたという。

 

精神的に追い詰められ、自己嫌悪で鏡を見ることさえできなくなった2011年初頭、彼女はモデルを辞めた。その後、1人で2カ月、アルプス山脈をハイキングして過ごし、ベルリンにアパートメントを借りた。やがてモデル業に復帰することを決心するが、それは「プラスサイズモデル」として、だった。

 

今、ファッション界ではより注目を集めているのは病的に細いモデルではなく、プラスサイズ(大きなサイズ)のモデルたちだ。全体的にムッチリと肉付きの良い彼女たちは「健康的で美しい」と評判だという。今年5月にVogue誌が19カ国で「痩せすぎのモデルは起用しない」と宣言したことも大きな追い風となっている。

 

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<プラスサイズモデルを表紙に起用したフランス版「ELLE」とイタリア版「Vogue」>

 

カロリンもプラスサイズモデルとして活躍したい、とニューヨークのエージェントに登録したが、プラスサイズに分類するには彼女は細すぎた。パッドを入れるなどして体をふっくら見せようと努力したが、”ニセモノ感”は否めず、プラスサイズの仕事はあまりもらえなかった。ストレートサイズ(従来の細いモデルサイズ)として仕事をしようにも「プラスサイズ」で登録しているため、痩せたモデルを探している人の目に止まることもなかった。その後、昔なじみの口利きでストレートサイズのモデルとして復帰した。

 

「この変化にゾクゾクしているけれど、同時に悲しくもある。私は”プラスサイズ”と呼ばれることが本当に好きだった。誇りに思っていたから、誰にでも私はプラスサイズよ、と自己紹介した。”プラスサイズ”という言葉が好き。私が記憶している限り、”プラスサイズ”と呼ばれたあのわずかな時期が人生でもっとも幸せな日々だった」

 

今は体重のコントロールに重圧を感じることはない。ごく普通に食べたり飲んだりすることも出来るようになった。ありのままの自分で、何の苦しみを味わうこともなくモデル生活を楽しんでいる。トップモデルとして活躍した3年間について、彼女はこう振り返る。

 

「信じられないほどたくさんの素晴らしいことを学んだ。喜びと、それと同時に恐ろしいまでの苦しみも経験した。この”思い出”を捨てようとは思わないけれど、もう二度と、同じことを繰り返したくない。この業界で働くということは、常に見た目と体を審査されているのと同じ。これは簡単なことじゃない。私のように十分細くない人には特に……」

 

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