Bryan Crowe / (C)A.M.P.A.S.
第86回アカデミー賞授賞式が米国時間2日夜、ロサンゼルス・ドルビーシアターで行われた。
助演女優賞は『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴが、助演男優賞は『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャレッド・レトがそれぞれ受賞。作品賞には、脚本賞を獲得した『ゼロ・グラビティ』が本命視されていたが、大方の予想を覆し、『それでも夜は明ける』が最高の栄誉に輝いた。
注目の主演女優賞では、オスカー常連のメリル・ストリープらを押さえ、『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットが初のオスカーを手にした。驚きの表情でステージに上がったブランシェットは、まず「ずっと立っているのは疲れるでしょう、座って下さい」と一言。
『ブルージャスミン』は裕福なソーシャライトとしてセレブリティ生活を満喫していたジャスミン(ケイト・ブランシェット)が、富も名声も失い、転落人生を歩む様子を描いている。虚言と現実逃避を繰り返し、ひたすら堕ちてゆくジャスミン。物語の後半では目は血走り、狂気すら漂わせる圧巻の演技を見せ、ゴールデン・グローブ賞をはじめとした各賞を総なめにした。
「この賞をいただくのは、本当に大きな意味があります。素晴らしい演技をした方たちがいるなかで、受賞できたことが信じられません。エイミー・アダムス、『アメリカン・ハッスル』での演技は素晴らしかったわ。メリル・ストリープ、サンドラ・ブロックの作品も、ずっと見ていられます。ジュディ・デンチ、本当に素晴らしいキャリアの持ち主です。ウディ・アレンの卓越したシナリオのおかげで、今私はここに立っています。『ブルージャスミン』を長い間上映してくださってありがとう。映画界では、女性を中心に描いた作品はニッチだと思われていますが、そんなことはありません。みんな見たがっているんです。稼ぎ頭にだってなれるんです。世界は丸いのよ。夫、3人の息子にも感謝します。ブルージャスミンは私の仕事の集大成といえるような作品。才能豊かな人たちに心から感謝します」と、興奮気味の口調でスピーチを披露した。
ブランシェットが選んだドレスは、ジョルジオ・アルマーニのもの。ヌーディなシフォン地に大小のスパンコールが全体に施されている。
そして、レオナルド・ディカプリオが悲願のオスカーを獲得するかどうかに注目が集まっていた主演男優賞は、『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒーが獲得した。
『ダラス・バイヤーズクラブ』でマコノヒーが演じたのは、HIV陽性で余命30日と宣告されたテキサスのカウボーイ、ロン・ウッド。生きのびるために未承認薬を密輸入し、米国でHIVに苦しむ患者たちが特効薬を入手できるよう奔走する。このロン・ウッドは実在の人物であり、ストーリーも実話を元にしている。
受賞者を決めるアカデミー会員は、その多くを俳優陣が占めており、過酷な役作りを達成した俳優に、多くの票が集まる傾向にある。そのため、徐々にやせ細っていく様子を実際に体重を減らすことで表現し、最終的には21キロもの減量を果たしたマコノヒーが最有力候補とされていた。
ドルチェ&ガッバーナのタキシードを着たマコノヒーは「ありがとうございます。6,000名の会員の方に心から感謝致します」と開口一番「Thank you」を3回繰り返した。
「人間に必要なものは3つあります。感謝、期待、目標です。まず、神に感謝します。感謝は報われるんです。そして父に感謝します。父は男になることを教えてくれました。母は自分たちを尊重することを教えてくれました。15歳のときにヒーローは誰かときかれ、10年先の自分の姿がヒーローだと答えました。自分のヒーローは常に10年先の自分。追いつくことは決してないけれど、追いかける相手がいるということが重要なんです。さあ、人生を歩んでいこうぜ」。涙ぐみ、感極まった表情でスピーチを絞り出したマコノヒーに、会場中から割れんばかりの拍手が送られた。