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米カリフォルニア州・レオナバレーの片隅に住むローレン・クライツァーは絶望していた。2007年、交通事故で左脚を失ったことで大工の仕事もクビになり、友人の家の敷地内にある小屋に間借りさせてもらう身分。月に使えるお金は障害者年金でもらえる200ドル(約22,000円)しかなかった。しかし、彼は一夜にして億万長者となり、人生を逆転させることに成功した。そのきっかけとなったのは、1枚の古いブランケットだった。
2011年、クライツァーはBBCの『アンティークス・ロードショー』を見ていた。この番組は、言うなれば英国版『開運!何でも鑑定団』。個人宅に眠るお宝を、各ジャンルのエキスパートが鑑定してくれるというものだ。ナヴァホ族のブランケットに50万ドルの値が付けられるのを見たクライツァーは、似たような毛布を祖母の遺品からもらったことを思い出した。祖母が亡くなったとき、クライツァーは約束していた本を受け取りに祖母宅へ出向いた。形見は母と姉妹によりあらかた取り尽くされていたが、1枚の毛布が無造作に床にうち捨てられていた。「どうしてこんなことをするんだよ」と姉に抗議すると、彼女は「そんな汚いものいらないからよ」と一蹴。クライツァーは思い出として毛布を持ち帰り、7年間に渡って保管していた。
クロゼットをひっくり返し、目当ての毛布を発見するも、彼の家族の反応は冷ややかなものだったという。母親は「うまくいっても10ドルくらいじゃないの」と鼻で笑った。なぜなら、その毛布は床に敷かれ、飼い猫が産んだ子猫をキャッチするときに使われていたからだ。クライツァーはブランケットに秘められているであろう可能性を信じ、2012年にオークションハウス「ジョン・モラン」に持ち込んだ。
競売にかけられた祖母の形見はみるみる値段が吊り上がり、クライツァーは大汗をかき、呼吸ができないほど緊張したという。そして、150万ドル(約1億6千万円)でハンマーが鳴らされた。落札者はまさに運命のあの日、『アンティークス・ロードショー』でナヴァホ族のブランケットに50万ドルの値を付けた鑑定人、ドナルド・エリスだった。クライツァーの祖母が子猫を包んでいた毛布は、1840年代にナヴァホ族によって手織りされた、非常に価値の高い逸品だったのだ。
彼は売却金で家を購入し、夢だったハーレー・ダヴィッドソンのバイクを手に入れた。余裕のある暮らしは彼の健康にも良い影響を及ぼし、妻と旅行を楽しめるまでに回復。彼の人生を変えたブランケットは来年、ニューヨーク・メトロポリタン美術館のネイティヴアメリカン・アートコレクションで展示される予定だという。