18日の『Tully』LAプレミアには元通りの体型で登場
写真:The Mega Agency/アフロ
演じる役柄に合わせ、徹底的に役作りをすることを「デ・ニーロ・アプローチ」と呼ぶ。アル・カポネを演じる際に髪の毛を抜いて外見を近づけたり、ボクサー役で出演した『レイジング・ブル』では25キロも体重を増やしたりしたロバート・デ・ニーロの壮絶な役作りに由来するものだ。最近では、クリスチャン・ベイルがその実践者として知られるが、女優ではなんといってもシャーリーズ・セロン(42)がその筆頭だろう。
最新作『Tully』で、新生児を含む3人の子どもの母親マーロを演じたセロン。赤ちゃんの夜泣き対応で疲れ切り、なりふり構う暇さえないリアルな産後の母親像を体現している。撮影に入る前に、セロンは体重を22.6キロも増やしたという。ET Onlineのインタビューで彼女はこう語る。
「この女性が何を感じているのかを、私も体感したかった。このやり方は私にとって彼女により近づき、内面を探る近道だったと思う。でもね、驚いたことに、ものすごく気分が落ち込んでしまったの。今まで、これほど大量に加工食品や糖分を含む飲み物を摂ったことがなかったから。最初の3週間くらいまでは楽しかったのよ。キャンディストアに行ったり、朝食にミルクシェイクをおかわりしたりね。でも、それ以降は苦痛でしかなかった。夜中の2時に起きて冷えたマカロニチーズを食べていたの。毎晩毎晩、喉に押し込んで。体重をキープするのは大変だった」
ふくよかになったセロンを見て、彼女の2歳になる娘は「ママのおなかにあかちゃんがいる!」と信じ込んでいたという。
セロンは『モンスター』(2003)では実在した娼婦の連続殺人犯を演じるために13キロも体重を増やして鬼気迫る演技を見せ、アカデミー主演女優賞を獲得した。撮影後に体型を元に戻すには1年半もの時間を要し、その期間を「地獄だった」と振り返る。そして『モンスター』の撮影時は27歳だったが、今年は43歳になる。急激な体重の増減は、心身に大きなダメージを与えるはずだ。
「27歳の身体と43歳の身体が違うことは知っている。主治医からもくれぐれも気をつけるようにと言われたもの」
そんな辛い思いを再びすることにはなるが、セロンは観客に育児の難しさを伝えられたことに大きな価値を見出したと話す。
劇中のマーロは毎晩、泣き声に起こされてはミルクを温め、寝付くまで抱っこし続ける。慢性的な寝不足で上の子どもたちには冷凍ピザを出すのが精一杯。家の中は散らかり放題で、落ちている物を拾う気力すら沸いてこない。飲み物をこぼされた服を脱ぐと、「ママ、その身体どうしちゃったの?」と心をえぐる質問が飛んでくる。
「この奮闘は全ての人にとっての現実。育児が思っていたよりはるかにキツイということを理解してもらえると思う。作品を観たたくさんの父親が、『こんな風だなんで知らなかった』と言ってきたの。『子育ては本当に大変で、みんなが言うようには絶対うまくいかない』ってことを気軽に言えるような機運を醸成していかないといけない。これは、私たちの責務だと思う」