吉田宏氏50歳、クランプス・ジャパン代表。中小企業がひしめく東京・板橋で、不景気の波にもまれる印刷会社を営みながら「このままでは自分も板橋も日本もダメになる。今までだれもやったことのないことにチャレンジしたい」と悶々としていた日々。そんな吉田氏が生まれ変わるきっかけとなったのが、クランプスとの衝撃的な出会いだったという。

 

クランプスとはオーストリア中東部やドイツ東南部、ハンガリー・ルーマニア北部において、クリスマスシーズン(概ね11月下旬〜1月上旬)に欠かせない白銀のモンスター。恐ろしい風体ながら実は心優しい聖ニコラウスの付添い人で、悪い子どもを正すため“おしおき”をしてまわる。1,600年から存在しているという風習で、日本のなまはげにそっくり。「なまはげの起源はクランプスなのでは?」という民俗学者もいるという。

 

「忘れもしません。2015年1月5日に放映された日本テレビ系『世界の果てまでイッテQ!』に登場したクランプスに一目ぼれ、これだ! と叫んでいました。すぐにオーストリア大使館に伝手(つて)を求めましたが、要領を得ず。オーストリア現地の旅行代理店を紹介してもらい、クランプスに詳しい民俗学の先生に辿り着きました。居ても立っても居られず、4月に飛び込み渡航。珍道中の末、なんとか現地の人々からレクチャーを受け10体を買い付け、日本に初めてクランプスを持ち込むことに成功しました」

 

その年の9月には、初のクランプス説明会を実施。ほとんどの参加者が見たことも聞いたこともないモンスターの催しに懐疑的ながらも、12月6日には、志村坂上商店街で第1回クランプスパレードを開催。以後毎年開かれ、現在のクランプス数は29体に増え、今年も12月2日に盛大に行われた。

 

「今回、オーストリア・ザルツブルク郊外のパレードで、日本人として初めて現地の人と混ざってクランプスを演じました。とくに大学生を中心にしたクランプス役の若者が大歓迎してくれて。もちろん本来の使命である観衆は怖がらせましたよ。感無量でした」

 

中年男の酔狂な遊びと侮るなかれ。止まることを知らぬパワー、クランプスの輪はじわりじわり日本でも着実に広まっている。今月24日、Xmasイブには、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタに登場。世界一怖い伝説のモンスター、日本でもこれから広まっていきそうだ。

 

ザルツブルク市観光局
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