リオデジャネイロ五輪の自転車競技、女子チームパシュートで銀メダルを獲得した米国のケリー・カトリンさんが8日夜、カリフォルニアの自宅で亡くなっていたことがわかった。23歳だった。
訃報はケリーさんの父であるマーク・カトリン氏が自転車競技専門のニュースサイト「Velo News」を通じて公表した。
「娘のことを、そして娘が送るはずだった素晴らしい人生のことを考えずにはいられません。娘の命と引き替えに、自分たちが生きていけるとも思いません。信じがたいほど辛いです」とカトリン氏は胸の内を吐露した。ケリーさんは自ら命を絶ったという。
ケリーさんは2016年から2018年にかけて、3年連続で世界選手権のタイトルを獲得したほか、プロコンチネンタルチーム「ラリー・UHC」にも所属して活躍していた。また、スタンフォード大学の大学院で計算数学を学び、バイオリン奏者としても一目置かれるなど、まさに文武両道を地で行く将来を嘱望された人物だった。
先月、ケリーさんはVelo Newsに、アスリートと研究者の二足のわらじを履くことについて思うことを寄稿していた。
「大学院生として、トラック競技者として、そしてプロロードサイクリストとして、全てを成し遂げるためには、タイムトラベルする必要があります。物事は隙間からスルスルと抜け落ちていってしまうのです。これは『時間管理が全てである』といったような決まり文句や、『学生でいることが、よりよいアスリートにする!』みたいな素晴らしいスローガンを私に言いたくなる時に心に留めておいてほしい重要なポイントです。結局のところ、私はどうにかこうにか、全てうまくやってる、ってことですよね? もちろん。ええ。それは大体合ってます。でも、真実はほとんどの場合、うまくやってるなんてことはないんです」
才能に溢れるケリーさんがなぜ自殺を選んだのか。その理由はわかっていないが、この手記からは方々から寄せられる期待の重圧で疲弊してしまっている様子が感じ取れる。
アメリカ自転車競技連盟の最高責任者ロブ・ドゥマルティーニ氏は10日、「自転車競技コミュニティは、この計り知れない損失を嘆いています。我々は、ケリーのチームメイト、コーチ、スタッフに継続的なサポートを提供して参ります。また、ケリーを知る全ての人が、この悲しみの時にお互いを支え合って下さるようお願い致します」と声明を発表した。