チャールズ皇太子夫妻はウクライナ正教会の大聖堂を訪問(写真:時事通信) 画像を見る

「国と国との間では、様々な緊張関係が今も存在しますが、人と人との交流が、国や地域の境界を越えて、お互いを認め合う、平和な世界につながってほしいと願っております」

 

天皇陛下は誕生日会見で、世界の平和を願うお言葉を述べられていた。しかし、天皇誕生日翌日の2月24日――。ロシアはウクライナに侵攻を開始した。世界中からの非難の声に聞く耳を持たないプーチン大統領は、攻撃の手を緩めようとすらしない。

 

そんななか、世界の王族たちが立ち上がっている。口火を切ったのはオランダのウィレム=アレクサンダー王とマキシマ王妃だ。侵攻開始当日、オランダ王室のホームページに声明を発表した。

 

《ウクライナの人々、そして暴力の影響を受けているすべての人々に、私たちは心を寄せています。私たちの思いは、現地の人々、そして家族や友人の状況を心配しているオランダのウクライナ人コミュニティと共にあります》

 

これに続いたのはイギリスのウィリアム王子とキャサリン妃だ。2月26日、ツイッターにこう記した。

 

《2020年10月に私たちはウクライナのゼレンスキー大統領と夫人に対面し、ウクライナの未来について、彼らの希望と明るい見通しを知ることができました。今、私たちはその未来のために勇敢に戦う大統領とウクライナのすべての人々を支持します》

 

ゼレンスキー大統領はツイッターで、これらの声明に感謝の意を伝えている。欧州の王室に詳しいジャーナリストの多賀幹子さんによれば、王室から政治的な意見表明がこれほど相次ぐのは極めて異例だという。

 

「英国王室メンバーに政治的な発言が許されているわけではありません。そのタブーを承知のうえで、人道上、やむにやまれぬ気持ちからの発信なのだと思います。ウィリアム王子夫妻は一昨年、バッキンガム宮殿に招いたゼレンスキー大統領夫妻と『共に戦う』と記すなど、かなり踏み込んでいます。ウクライナ国旗の絵文字を使うなど、時代に合ったメッセージだと思います。

 

驚いたのは、次期国王であるチャールズ皇太子までが、演説でロシアのウクライナ侵攻を『残虐な侵略』と強く非難したことです。こういった政治的な発言は、異例中の異例といえます。チャールズ皇太子はさらに、カミラ夫人とともにロンドン市内のウクライナ正教会に出向くなど、ウクライナに寄り添う行動を伴っています。タブーをおかしてまで意見を表明するという姿勢を、高く評価するイギリス国民が多いようです」

 

欧州王室のウクライナへの支援の輪は、どんどん広がっている。エリザベス女王までもが、ウクライナへの人道支援に寄付を行った。金額は公表されていないが“惜しみない寄付”だという。

 

ギリシャのマリー=シャンタル王太子妃は自身のインスタグラムに、風にたなびくウクライナ国旗の写真を投稿。《私は心からウクライナの味方です。そこに住む4,400万人の男性、女性、子供たちを守る必要があるのです》と訴えた。

 

ほかにも、スウェーデンのマデレーン王女や、ノルウェーのマッタ=ルイーセ王女がインスタグラムでウクライナへの連帯を表明している。

 

スペインのレティシア王妃は、ウクライナの民族衣装である「ヴィシヴァンカ」の刺?入りブラウスを着用して公の場に登場。ファッションでウクライナ支持を明確にしたのだ。

 

欧州各国の王族たちによる異例の発信で、「反戦の輪」はとどまることなく広がっている――。

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