「Take the Money and Run」を鑑賞する女性(写真:ロイター/アフロ) 画像を見る

デンマークのコンセプチュアルアーティスト、イェンス・ハニング被告に対し、コペンハーゲンの裁判所は18日、作品の制作費として美術館から借り受けた53万デンマーク・クローネ(約1120万円)を、ほぼ全て返還するよう命じた。一体何があったのだろうか。

 

ハニング被告は、デンマークのクンステン近代美術館に収蔵されている『オーストリア人の平均年収、2007』『デンマーク人の平均年収、2007』の制作者。オーストリア人とデンマーク人の平均年収に相当する額の紙幣をキャンバスに貼り付けた作品で、BBCによると美術館は’21年にこの2作品の最新版を制作するようハニング被告に申し入れたという。

 

ハニング被告は貼り付ける紙幣を調達するために53万デンマーク・クローネを貸与されたが、彼が美術館に送ったのは2つの空白の額縁だった。ハニング被告曰く、この作品のタイトルは「Take the Money and Run(金を持って逃げろ)」であり、低賃金という問題を自分なりに解釈したもの。「契約違反」もこの作品の一部だ、と自信たっぷりに館長あてのメールで解説したという。

 

当時、CNNのインタビューでハニングはこう語っている。

 

「私の芸術的見地から言わせてもらえば、彼らの想像をはるかに超える作品を作ることができたと思っているよ。私は金を盗んだとは考えていない。芸術作品をつくったんだ。それも、計画されていたものより10倍も、100倍も良い作品をね。何が問題なんだ? この新しいアートは、宗教や結婚といった社会構造、制度について考えることを人々に促しているんだ。そして、必要であれば……金を持って逃げろ」

 

クンステン近代美術館は送りつけられた額縁に、プリントアウトしたハニング被告のメールを添えて展示。そして、制作費を着服したとして全額の返済を求めハニング被告を提訴したという。ハニング被告は支払いを拒否し、法廷闘争に発展した。

 

およそ2年にも及ぶ裁判の末、裁判所は「ハニングは2つの異なる作品を美術館に納品することに同意していたが、美術館との契約内容に鑑みると『Take the Money and Run』には欠陥がある」として、ハニング被告側に貸与された制作費のうち、諸費用を差し引いた49万2549デンマーククローネ(約1050万円)を返還するよう命令を下した。

 

ハニング被告は判決後、TV2 Nordの取材に応え、「この事件をめぐる報道のおかげで、美術館は投資した額よりずっとずっと儲かったんじゃないか?」と語った。

出典元:

WEB女性自身

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