韓流ファンは必見!映画『拝啓 あいしています』は号泣必至

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韓国では圧倒的な支持を受けた映画『拝啓、愛しています』。原作は、’07年、ン・プルによるベストセラー・コミックス。舞台版は12万人を動員というロングランヒットを記録。’11年映画化された本作では、観客動員数160万人を突破した。

韓国俳優界の至宝、イ・スンジェが主演し韓国中に愛されている本作は、老齢に入り向かい合う新たな出会い、男同士の友情、心優しい認知症の妻を支える夫の夫婦愛…いずれ誰もが迎える老人問題を冷静に据えながら愛情深い視点で人間愛の真実を描いている。

残り少ない時間を必死に生きる主人公たちの姿は、どこかおかしく、けれど切なく我々の胸を打つ。国に境のない老人問題。愛する人と生きていきたいという簡単な願いすら叶えられない社会の歪に老人たちが取った選択は?静かな感動が胸を打ち、感情を揺さぶり号泣必至。愛の“カタチ”に老若はないと実感。韓流ファンは、必見です!

『拝啓、愛しています』

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監督:チュ・チャンミン 原作:カン・プル

出演:イ・スンジェ『イ・サン』、ユン・ソジョン、キム・スミ、ソン・ジェホ、ソン・ジヒョ、オ・ダルス

12月22日よりシネスイッチ銀座、シネマート新宿ほか全国順次公開

配給:アルシネテラン (C)Next Entertainment World All rights reserved

主演は韓国俳優界の至宝、イスンジェにインタビュー

●今回の映画『拝啓 愛しています』は大変感動的な映画でした。人生の過渡期を過ぎた老人たちの恋愛観、結婚観そして家族について思いを教えてください。

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この映画を極端だと見る向きもあるでしょうが、一方でこれはごくありふれた出来事として、韓国社会のなかで老人たちがぶつかる問題です。認知症夫婦の自殺は、私の目から見れば至高至純な「純愛」の表現です。 また、その裏には子供を思う心があります。娘に通帳を渡すシーンとか、子供が非難されないように自殺を隠そうとする姿は「家族愛」を浮かび上がらせます。

一方マンソクとイップンについては、独りになった老人たちの問題が主題です。お金がある裕福な老人たちにとっては何の心配もないでしょうが、経済的に余裕のない中で独りになった老人たちの抱える不安や悩み、これは深刻な社会的問題になっているし、韓国もこの問題を社会、政治的に解決しようと努力しなければならない時期になってきました。今年の大統領選挙(12月19日)でこれに対する政策公約がないことが残念ですが。老人問題は非常に深刻かつ大きな問題ですが、この映画はその中に一つの提言を示していると考えています。昔は配偶者に死なれたら再婚せずに操を守っていくのが普通でしたが、もう時代が変わりました。また、現代は老人たちが集まり、出会える色々な場所があります。このような出会いを通じて退行していく精神的な問題を少しでも解決できないだろうか? 仮にも異性に会うのにみっともない格好はできないですよね。つまり、老人たちが精神的に自己管理をすることになり、これが心に刺激を与えて元気になることにつながると思います。あえて結婚でなく異性の友人という概念で会える場を作ることで、老人たちの心のケアを助けることができると思います。 

現在の老人たちは肉体能力あるいは性的能力も10年以上延びたのに、社会的にはこれを受け入れる場所がない。元気な老人たちを再活用(リサイクル)するシステムを作らなければなりません。老人たちが長い間の経験で蓄積されたノウハウをリサイクルできる社会システムを作るのも重要な問題でしょう。また、同時に老人たちの心理的な問題は、異性間の出会いという小さなきっかけを通じて、互いに交流することだけでも大いに良くなることができるんです。家庭や子供たちが積極的にこれを薦めることもいいでしょう。どうかこの映画を見た方々が老人たちのこのような悩みに関心を持って、少しでも配慮してくれるきっかけになればと思います。  

 

●『拝啓 愛しています』は韓国では大変に話題になった作品です。なぜ、ここまで大衆に受け入れられたと思いますか?

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この映画は老人たちが中心となった映画で(韓国版の)ポスターにも老人二組が真ん中に写っています。実は最初、このポスターを見てこれじゃだめだと思っていたんです。最近、韓国でヒットした映画というと、若い俳優中心のアクション映画で、製作会社もメジャーどころが大部分です。正直、初めの予想は公開期間が2週間くらい、観客動員数も2、30万だろうなぁと思っていました。しかし観客の声援によって3ヶ月間も上映され、170万の観客を動員するなど予想に反して大成功を収めました。その原因はこの映画があまりにも写実的で、どこにでもあるような話であるからだと私は思います。この映画はファミリー層には「我が家にも起きうる話」として、また高齢者層には「自分自身の話」として、さらに若者たちにはとてもロマンチックでヒューマンな物語として受け入れられたのです。

 

●私がとくに好きなシーンはケーキを前に素直に愛を告白するシーンでした。イ・スンジェさんがこの作品で特に愛しているシーン、印象深いシーンを教えて下さい。

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ケーキの前で告白するシーンはマンソクが一世一代の告白をする大事な場面。人を愛さないわけではなく、あまりにも家父長的な権威にとらわれた性格で、人とは無愛想にしか接することがなかったマンソクが、孫娘に“いまどきはちゃんと表現しなければならない”と諭されたことから、ケーキを買ってきて歌まで歌って苦手な愛の告白をするというシーンです。マンソクは多分口を開くのさえ戸惑ったことでしょう。その照れくさいマンソクの心を表現するのにいろいろ工夫しました。

また、最後に別れるところで抱擁する場面は、それこそこの映画の「核」です。普通の韓国映画だとこのような場合では泣くんですが、できるだけ泣くのを我慢することにしました。撮影開始前から、このシーンが一番大事になると思ったので、常に念頭に置き悩みぬいた末での演技です。

ところで一つ正直に言うと、この映画にはカットされた場面があります。実は、故郷の家にはイップンのお母さんが生きていたのです。現場でキャスティングしたエキストラさんの芝居が残念ながら下手過ぎて、仕方なくカットされてしまったんです。個人的にはぜひとも残しておいてほしかったシーンだったのですが、惜しくも最終的には編集されてしまいました。イップンを訪ねて行ったマンソクが安心して一人で帰れた理由が、彼女のお母さんが生きていることを知ったからだったので、残念ながら見ることはできなくなりましたが、いろいろな面でこの映画を通じて一番記憶に残っているシーンですね。

 

●『拝啓 愛しています』撮影中の苦労したエピソードは。

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バイクに乗るシーンが一番大変でした。 本来バイクに乗れないので撮影前に少し習ってから撮影に臨んだんですが、バイクが重くて重くて。 私が乗るバイクには自然な動線を考慮して補助車輪を付けたのですが、それでもバイク自体がとても重くて調整するのが大変でした。あと、(日本版の)ポスターになっている場面も、坂道での撮影が大変でした。それにご存じのように雪が降らなかったので、人工的に雪を作りながら撮影しなければいけなかったことにも結構苦労させられましたね。また道に迷ったキム・スミさんと一日を共に過ごすシーンがありますが、その日もすごく寒かったのにバイクに乗るはめになって、とてもしんどい思いをしました。

 

●テレビドラマ版でもマンソクを演じられました。マンソクという役はイ・スンジェさんのキャリアにどのような足跡を残しましたか?

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マンソクはこれまで私が演じたことのないタイプの役柄です。高卒なのか中卒なのか確実でない低学歴、ちゃんとした会社に就職したこともなく、老年になって牛乳配達をしながら暮らしているマンソクは、おそらく韓国最下層に該当する人物で、今まで私が作り出したことのない真新しいキャラクターでした。しかし、一方ではとても共感できて情操的になじみやすいキャラクターでもあったので、無理せず気楽に楽しく演技できました。 ひとつだけ、原作には罵詈雑言がとてもたくさん出てくるのですが、そういったものが苦手な私が少し純化させました(笑い)。罵詈雑言を自制しながらも口が悪いマンソクの役柄に忠実であろうと努力しました。ただ、マンソクは韓国社会にいくらでもいる「普通のおっさん」だったので、そのあたりはあまり誇張しないで写実的に表現しようと気をつけました。

 また、久しぶりに映画の世界に戻るきっかけにもなりました。70年代は映画もたくさん撮っていましたが、韓国映画界が70年代に崩れ始めたことから、私も映画を長く休んでいました。この作品と出会ったことで、2000年代に入って久しぶりに映画出演することになったわけです。 

マンソクは私が作った色々なキャラクターの中の一つではありますが、やってみたことのない新しい芝居を経験させてくれたうえ、久々に映画界へ戻る機会までも作ってくれるなど、私にとって新たな挑戦を与えてくれるキャラクターとなりました。

 

●年齢を重ねながら俳優としての自身が変わって行く点は?この映画にそれが反映されたか?

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老人たちの社会的活動という領域は職種によって違うと思います。私たちの職種は定年がない職種です。芸術行為というのは終点がなくて完成がなくて定年もまたない行為です。このような条件で本人が元気で仕事に耐えられるのであれば、俳優というのはいくらでも継続できる職業であります。ただし年配の俳優たちが限界を感じるのは老人としての症状が出て来る時です。たとえば、収録現場でNGを多く出したり、台本を覚えられない場合がしばしばあるとき。特に撮影日に最終台本が出てくるのが普通である韓国ドラマ界では、暗記力がついて行かなければ俳優を辞めるべきですが、幸い私はまだ大丈夫なようです(笑)。 今は大して無理をせずとも仕事ができる状態ですが、いずれ私にも限界がくるかも知れない。出来ることであれば永遠の現役として残りたいですけどね(笑)。 

私はこの仕事を記念碑的に終えたいという欲はありません。メモリアルイベントなど一度もしたことがありません。ある瞬間終わりがきたら終わるということで、なにも大げさに記念式などするつもりはまったくありません。

年を取れば年を取ったなりに作品を通じて表現したり、加えることができきたりする領域が増えてくると思うし、そのためにも作品ごとに最善を尽くさなければならない。この年になっても新しい作品に出会うたびに新しいものを学び、刺激をうけますから。  

 

●これから作品を観る日本のファンへメッセージをお願いします。

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この映画は非常に韓国的な映画ですが、日本人のメンタルにもよくマッチする作品だと思います。 日本で作られる映画はヒューマニズムを土台にした小資本映画が多いようです(例えば私は『鉄道員(ぽっぽや)』や『おくりびと』を見て感銘を受けました)が、そういった側面から見れば、もしかしたら韓国以上に日本で受け入れられる要素が強い映画かもしれません。

韓流を愛してくださる日本のファンの方々には本当に感謝しています。 私だけでなくペ・ヨンジュンなどの若い韓流スターが日本でブームになったきっかけは、決して戦略的なものによったわけでなく、日本の方々が愛してくださり、ご声援をくださったからこそ可能だったことです。我々俳優たちはそのようなご声援に常に感謝しています。

この映画は日本の方でも十分に共感できる映画で、本当に愛していただける作品だと自負しています。どうぞあたたかい目で見て下さい。後輩やスタッフたちを代表して、日本の皆さんの熱いご声援をお願い申し上げます。

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