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再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く!

 

【第3回】『チャングム』から12年。イ・ヨンエ復活が意味すること

 

『冬のソナタ』の後、韓流ブームを決定づけたのは、何といっても、’05年に日本で放送された『宮廷女官 チャングムの誓い』(以下・チャングム)で、NHKでも放送という点でも同じだが、一つ決定的に違うのは、男女双方が観賞したことだ。『冬のソナタ』はまず女性だけといってもよかったが、『チャングム』は違う。韓国ドラマに触れた男性の視聴者はこの作品が最初というのがほとんどだったはずだ。さらに、年代層も意外に広く、それまで大体50代前後だったのが、この作品で40〜70代まで広がった。加えて、セル中心の『冬のソナタ』に比べて、『チャングム』は巻数が長いこともあり、圧倒的にレンタル主体だった。このレンタル率は日本最大レンタルチェーンにその記録があり、おそらく今後もまず破られることはない、日本最高記録といわれている。

 

だが、主役のイ・ヨンエは、’09年に結婚で女優業を“引退”してしまう。その後、’12年に『チャングム』の続編の企画もあったが、イ・ヨンエ自身が出演を承諾しないため、結局その企画自体、頓挫してしまった。では、ほかの作品ではどうかとのことで、カムバック作まで話を持っていくために、放送局(SBS)はその前哨戦(ゴマすり?)としてか、家族も出演する特番まで制作して何とか実現にこぎつけたのが、現在、日中韓で同時放送中(KNTV)の『師任堂(サイムダン)、色の日記』というわけだ。

 

この特番『イ・ヨンエの晩餐』(’14年)は韓国料理の歴史をたどる趣旨のドキュメンタリーで、後半はイ・ヨンエ自身の家族も登場し、見方によっては芸能番組的な要素もあり、意外にも双子の子供たちまでが堂々と素顔のまま登場している。ここまでプライバシーを公開する必要はないのではと思われるが、スター女優の心理は一般常識では計れないようだ。

 

そこには、女優の存在はもちろん、成功した実業家の夫と双子の子供たちとの家庭という究極のセレブとしての完成形を誇示したい意図も感じられる。そのくらいこの特番でのイ・ヨンエはその点について象徴的で、しかも極めて魅力的である。

 

12年ぶりのドラマ出演という復活の裏には単なる女優業への復帰だけではなく、’18年平昌オリンピックの広報大使ともなった、新しいセレブとしてのデビューと、その確認の意味のほうが大きかったと思われる。

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