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(写真:THE FACT JAPAN)

 

再ブームの予感がする韓国ドラマ。そんな“韓ドラ”の凄ワザを、『定年後の韓国ドラマ』(幻冬舎新書)の著書もある、韓国ドラマを15年間で500作品見た、作家・藤脇邦夫が読み解く!

 

【第14回】『隣人の妻』――同年代女性が共感した意外な痛快シーン

 

ドラマの本筋とは一見関係のないような、さりげないシーンがいつまでも心に残るのが、名作の証拠と筆者は以前より考えているが、これは韓国ドラマでも例外ではない。そんなシーンが満載の作品を今回は紹介してみよう。

 

本欄では期せずしてケーブル局制作のドラマを紹介することが多くなっているが、それだけ、今のケーブル局ドラマは韓国の現在をストレートに投影しているともいえる。従来の多様な世代が見ることを前提にした家族ドラマ以外の、特定の層の「家族ドラマ」を現在見るにはケーブル局しかないといっていい。要するに自分の希望する番組を見たいのであれば、その選択は当然有料に直結するわけで、この方式を最良の形で実践しているのが韓国のケーブル局だ。

 

その中でも、’13年の『隣人の妻』(JTBC)はその典型的な作品例といっていい。おそらく、家族ドラマでありながら、親子の日常と同じ比重で、夫婦の性生活が扱われたのは、韓国ドラマの中でこの作品が初めてである。

 

医師と広告代理店勤務の共働き夫婦には中学生、高校生の2人の子どもがいる。夫婦の性生活にトラブルがあった夜の翌日、朝食は母親が適当に作るが、食事中、子どもたちはそのよそよそしい態度から、親たちの事情にある程度感づいている。これは見方によっては、少し危ない設定である。地上波放送では絶対ありえない設定とドラマ展開ともいえる。

 

メインストーリーはもう1組の夫婦と、会社、家庭共々、不倫も含めて密接な関係になっていく過程が中心の一種の不倫ドラマだが、2組の夫婦それぞれが親密な間柄になる設定はそんなに珍しくない。この作品はシリアスとコメディがないまぜになっている展開が新鮮で、なかでも見どころは、広告代理店勤務の母親(ヨム・ジョンア)と会社の同僚でもある、40代の独身遊び人OLとの奇妙な友人関係だ。ある時、話があるといって、その友人を夜中に呼び出し、2人でドライブして愚痴を言いながら朝まで飲み明かすシーンは痛快の一言に尽きる。

 

何とその回の半分近い時間を占めていて、本筋には意味のないこんなシーンが効果的に効いていたためか、ドラマの視聴者は敏感で、平均3%で同局の最高記録となった(因みにケーブルの視聴率を3~4倍すると地上波と同等になるという)。同年代の女性は、例えば、こういったシーンに最も共感したのに違いないと思うのだが、どうだろうか。

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