■泥沼騒動の原因、理解するためのポイントは?
「そもそも、HYBEが企業として上場したのは’20年と、まだ日が浅いんです。’20年までに、芸能事務所の企業を買収・吸収し、巨大複合企業へと急激な成長を遂げます」
HYBEが、短い期間に巨大化したひずみが、今回の騒動に発展したと松谷さんは分析。さらに、この泥沼騒動を理解するには2つのポイントがあると指摘する。
一つ目は、今回のけんかが「ビジネスvs.クリエイティブ」である点だ。
パン氏をはじめとするHYBEの経営陣は利益を追求するが、一方のミン氏はクリエイター。利益よりは作品を大事にするという。
「ミン氏はNewJeansがデビューする前から、自分がやりたいことを貫いていたのでしょう。ただ、経営陣からすると、ミン氏の要望をすべてかなえるわけにもいかない。前社も含め相当なキャリアを築いてきたミン氏の“声の大きさ”をよく思わない経営陣は多かったかもしれません。涙の会見で国民の同情を誘ったのも、HYBE経営陣としては非常に嫌だったと思います」
二つ目のポイントは、「新たな音楽シーンを開いたNewJeansの魅力」にある。
「NewJeansは、10代の女の子の刹那的な感情をナチュラルに映し出しています。従来のK-POPよりもクールでリズムも複雑。圧倒的に耳に気持ちよく、何度聴いても飽きません」
’80年代、坂本龍一のシンセサイザーを使ったYMOのテクノポップが、新たなシーンを開拓したのと似た衝撃があったと松谷さん。
「世界的にインパクトを与え、NewJeans前と後というほど音楽シーンをがらりと変えました。とにかくミン氏の功績は大きいです」
しかしミン氏は、パン氏が’24年に手掛けた「ILLIT」というグループが、NewJeansのスタイルをコピーしたと批判している。
「確かに似通う点はあるかもしれませんが、『まねを許さない』というのはどうだろうかと思います。流行というのは、新たに誕生したものに同調し、またそこから差異化してと、追いつ追われつをくりかえしていくものです。ミン氏の気持ちもわかりますが、やや過激に感じます」
今後の展開について、松谷さんは、かつての東方神起、SMAPのように分裂・解散の可能性もあると予想している。
「元のさやに戻る可能性は低いでしょう。ファンにとって理想的なのは、ミン氏とNewJeansが一緒に独立することかもしれませんが、そうなると商標となるグループ名は使えない。ミン氏が辞任して、NewJeansだけ残るというパターンもあります。メンバーが決裂をして一部だけがミン氏と一緒に独立する可能性もゼロではありません。結局、最後のイニシアチブは、メンバーが握っているでしょう」
ミン氏独立の真偽は定かではないが……NewJeansの音楽が長く続くことを願うばかりだ。