「国民に寄り添いたい」とのお気持ちから、被災地など頻繁に遠方まで足を運んでおられる美智子さま。行く先々での慈愛あふれるお声がけに、感動の涙を流す人も多いという。それは、まさに“奇跡を起こすおことば”−−。実際に美智子さまとお会いしたことで「人生が変わった」という方の証言をご紹介。
’76年から11年までの35年間、美智子さまの専属デザイナーを務めたことで知られる、故・植田いつ子さん。美智子さまはスーツやドレスなど洋裁にも、佐賀錦、西陣織、染めぼかし、疋田絞り、箔など“和テイスト”をうまく取り入れられている。植田さんの秘書として30年近く、サポートしてきた西澤万紀さん(72)にも、美智子さまにいただいた忘れられないお言葉がある。
植田さんは晩年、パーキンソン病を患い、歩行も困難となった。“これ以上続けても、迷惑をかける”と、’11年11月、美智子さまの仮縫いのために御所に参内した。「あの日、植田は、身を引かせてくださいと、皇后さまにお伝えしたのではないでしょうか」と西澤さんは話す。
「車いす生活の植田の付き添いで伺った私は玄関で待っていたのですが、女官さんから『皇后陛下からお話がありますので、お仮縫い室まで来てください』と呼ばれました」
部屋の前でしばらく待っていると、植田さんとの打ち合わせを終えた美智子さまがいらっしゃったという。
「『長い間ご苦労様でした。日本の職人の技を絶やさぬよう、着物地などでお洋服を作っていただいたけれど、そういう伝統を継承していってください』と美智子さまはおっしゃいました。私はただただ緊張して、そのお言葉を聞き逃さないようにと思っていました。そして『アトリエの皆さんによろしくお伝えください。これからも元気でいてくださいとお伝えください』とも。長年、植田と一緒に仕事をしてきたスタッフにとって、本当にありがたいお言葉でした」
現在、美智子さまのデザイナーを務めているのは、イッセイミヤケで活躍していた滝沢直己さんだ。
「植田が学んだ桑沢デザイン研究所の後輩で、植田が推薦したのです。もちろん、滝沢さんには、美智子さまのお言葉をお伝えしました。滝沢さんもよく理解されていると思います」
長年、美智子さまと作り上げた“和テイスト”の技は、しっかりと引き継がれている。