被災地で苦しむ人に寄り添いたい――。その思いを胸に、皇太子ご夫妻は岩手、宮城、福島の被災3県を3回ずつ訪問された。お二人は、とりわけ若い世代の活動に心を寄せられてきた。
’13年からは、被災地の中高生約100人が参加した教育復興プロジェクト「OECD東北スクール」の活動を応援されていた。“運命の出会い”のきっかけとなったのが、福島県いわき市で被災し、’13年当時は高校2年生だった釣巻洋子さん(22)が雅子さまに宛てた手紙だった。釣巻さんが当時を振り返る。
「私たちの活動を知っていただきたいという思いで書き綴った手紙でした。まさか私の手紙がきっかけで、本当にお会いできるなんて思ってもいませんでした」
その手紙でOECD東北スクールの活動を知った雅子さまは、’13年8月に開かれた東京での発表会への訪問を強く希望され、皇太子さまとご一緒に出席された。そして、釣巻さんと面会を果たされた雅子さまは「お手紙ありがとうございました」と優しく語りかけられたのだ。
「雅子さまからは、何か私たちを応援できることはないかと、真剣に考えてくださっているお気持ちを感じました。それまでの私は受け身な性格で、自分がやらなくても誰かがやってくれるだろうという考えがありました。でも、自分が一生懸命に行動を起こせば、雅子さまのようにしっかり受け止めてくれる方もいらっしゃると実感しました。今でも、その経験が支えになっています」(釣巻さん)
このご交流は、釣巻さんにとって“人生を開く”出会いとなった。そして参加した中高生たちとの語らいは、雅子さまの胸にも深く刻まれたという。面会の翌年’14年8月には、プロジェクトの集大成として企画や資金調達まで生徒たちが担い、フランス・パリでの復興PRイベントを成功させた。皇太子ご夫妻は、’15年2月に生徒たちを東宮御所に招き懇談されている。
OECD東北スクールの立ち上げから生徒たちの支援をしている福島大学副学長の三浦浩喜さんは、昨年に皇太子ご夫妻への活動報告書を提出したという。
「報告書を届けてくださった方から『皇太子ご夫妻は生徒たちの活動に大きな関心をお持ちで、今回も報告書を熱心にご覧になって非常に喜んでおられた』とのお話を伺いました。これからも活動を続けていく励みになっています」
釣巻さんが手紙を書いてから6年が経つ。震災時はいわき市の中学2年生だった釣巻さんは、現在は同志社大学の4年生だ。昨年、同志社大で開催された「世界学生環境サミット」で開催宣言もした。開催権を獲得するために各国の大学とのコンペを勝ち抜き、協賛金集めにも奔走したという。昔は“受け身”だった釣巻さんが、雅子さまとの出会いから成長し、学生チームを引っ張るリーダーとして活躍したのだ。雅子さまが皇后になられる日まで2カ月を切った。今度は釣巻さんが、雅子さまへの期待を語ってくれた。
「若い世代が新たな挑戦をするために、その背中を押してくださる雅子さまのような方が次の皇后になられるのは、素晴らしいことだと思っています」
次世代の若者たちからの大きな期待を背負い、雅子さまは「新皇后の決意」を新たにされる――。