「僕にしかできないことがきっとある。雅子さまとお会いしたときに、アメリカ留学の目標が僕の中で確固たるものになったのです」
こう語るのは米国カリフォルニア大学バークレー校4年生の佐藤陸さん(23)。福島県いわき市出身の佐藤さんは、東日本大震災後に発足した被災県の中高生約100人が参加した教育復興プロジェクト「OECD東北スクール」(以下、東北スクール)のリーダーの1人として、2013年8月に皇太子時代の両陛下と懇談した。
「震災当時、中学生だった僕には、福島のために何かしたいけど何もできない、というもどかしさがありました。高校生になり『東北スクール』に参加。みんなと力を合わせて取り組んだ発表会が東京であり、そこに天皇陛下と雅子さまが出席してくださったのです」
その当時の雅子さまは、ご体調に波があり行事に出席する機会が限られていた。しかし、被災地に心を寄せている雅子さまは、復興の担い手を育てるプロジェクトに関心を抱かれていたようだ。
「発表会の後に両陛下にお会いしましたが、雅子さまの優しい笑顔に緊張がほぐれ、陛下からは『とてもいい発表会でした。引き続き頑張ってください』という励ましのお言葉まで。復興事業のプラン化や協賛企業への訪問など発表会までの苦労が吹き飛び、活動を通じて学んだことを被災地に恩返ししたいという思いが強くなりました。
僕の隣には、気仙沼市(宮城県)から来たメンバーがいて、雅子さまは『気仙沼はホヤがおいしいですよね。食べたことありますか?』と尋ねられ、親しみを覚えました」
’15年2月、両陛下は東宮御所に、佐藤さんら「東北スクール」の主要メンバーを招待されている。
「1年半ぶりの再会に雅子さまから『また会えてうれしいです』と声をかけていただきました。僕が3カ月後にアメリカに留学することを伝えると、雅子さまからは『とてもいい経験になると思うし、たくさんの学びがあると思うので、ぜひ頑張ってください』というアドバイスと『お体に気をつけて』というお言葉をいただきました。そのころの雅子さまは、ご体調が優れず、ご公務をお休みになることもありました。そんな雅子さまが、僕たちのことを気にかけてくださるなんて、とても優しい方だということと同時に、僕も頑張ろうと思いました」
アメリカの名門大学で、さまざまな学問を学び、その視点を用いて福島の問題を考える、という学際的なテーマで論文を執筆中。来春には東京の外資系企業への就職も決まっている。
「福島のため、被災地のためという僕の中心軸は変わっていません。たしかに故郷に帰ることも立派な貢献だと思います。でも、東北の出身者が、アメリカの大学で学び、東京で働いている姿を今の被災地の中高生に見せることも大事。雅子さまから僕が勇気と自信をいただいたように、僕の姿が彼らの刺激になればいいなと思っています」
『女性自身』皇室SPECIAL即位記念号「雅子さま 輝く笑顔が時代をひらく!」より
『女性自身』皇室SPECIAL即位記念号「雅子さま 輝く笑顔が時代をひらく!」
発売日:10月15日(火)
発行:光文社
価格:500円(税抜き)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334843417/