「私は、ここに、第32回近代オリンピアードを記念する、東京大会の開会を宣言します」
最大6万8千人が収容できる国立競技場の客席には、人影はほとんどない。選手と約900人の関係者が見守る中、天皇陛下は東京五輪の開会を宣言された。
開会式の前日には、バッハ会長をはじめとするIOC(国際オリンピック委員会)委員19人と皇居・宮殿「春秋の間」で面会。実はこのとき、バッハ会長が“厚顔”ともいえる行動を見せていた。
「IOC委員たちは一人ずつ入室し、陛下に挨拶だけをして席に着くことになっていました。しかしバッハ会長は、陛下に一礼するとそのまま一方的にしゃべり始めたのです。面会を取り仕切っていた式部官長が時間を気にして2度時計を見るほどでした。なかなか終わらないので陛下も短く受け答えせざるをえず、たまらず式部官長がバッハ会長に話を終わらせるように促しました」
バッハ会長の身勝手な“不規則発言”に、式部官長は憮然としていたという。バッハ会長といえば開会式では13分にも及ぶ長すぎるスピーチが話題となったが、開会式前日にも失態をおかしていたのだ。
出席者全員がそろったところで陛下がバッハ会長へ述べられたお言葉には、コロナ禍の五輪開催への強い憂慮が込められていた。
「現在、世界各国は、一昨年末より世界中を襲った新型コロナウイルス感染症の感染拡大という大変厳しい試練に直面しています」
「新型コロナウイルス感染症に対する万全の対策を講じながらの大会運営は決して容易なことではないと思います」
「夏の盛りの熱波にも注意が必要です」
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