■陛下が1回接種で五輪に臨まれた理由
なぜ、2回目の接種が間に合わなかったのか。「陛下ご自身の安全のためにも、世界のVIPへの配慮を考えても、接種を早めるべきだった」と、政府や宮内庁を批判する声もある。
だが、宮内庁関係者は「天皇陛下は、国民よりも優先して接種されるという考えはいっさいなかった」と語る。
「五輪開幕の時点で、ワクチン接種を2回完了した割合は、日本人全体でやっと2割を超えたばかり。五輪のボランティアさえも多くが接種を完了できていないのです。日本国民の多くがワクチンを接種しておらず、感染の不安を抱える中で五輪が開催される……。ご自身も接種を終えないまま五輪に臨まれた陛下は、IOC関係者に対して、日本国民が置かれた状況を少しでも理解するよう、身をもって示されたのではないでしょうか」
本来であれば、御代替わり直後に開催される東京五輪は、天皇陛下と雅子さまが国際親善に活躍される舞台になるはずだった。長野五輪では、上皇ご夫妻が現地のホテルで茶会を催され、IOC関係者ら200人あまりが出席している。今回は、皇族方の競技観戦も取りやめになっている。雅子さまがお出ましになる機会もまったくないのかもしれない。
ただ、雅子さまも、選手たちを応援するお気持ちは変わっていない。宮内庁は、福島市で行われたソフトボール予選での日本選手の活躍を、両陛下が喜ばれていると明らかにした。始球式では投手を務めた福島県いわき市の中学3年生は「復興五輪」への思いをこめて投球したという。中学、高校とソフトボール選手として活躍された雅子さまは、胸いっぱいのご様子だったそうだ。
陛下が懸念されていた感染拡大の危険性が拭えない中で始まった東京五輪。両陛下が安堵とともに閉会式を迎えられることを願うばかりだ――。