■国民との“絆”が揺らぐ可能性
天皇と皇后以外に戦後行われた国葬は、唯一1967年に死去した吉田茂元首相の例がある。皇室からは、当時皇太子だった上皇さまと美智子さまらが参列された。
「天皇皇后両陛下は、大喪の礼などの例外を除き、葬儀には参列されない慣例となっており、昭和天皇は侍従長を勅使として遣わされていました。前例にならえば、皇嗣と皇嗣妃である秋篠宮ご夫妻が参列されることになるでしょう」(前出・宮内庁関係者)
だが皇族の参列に対して、静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんは、こう危惧している。
「国民が抱く皇室への信頼や崇敬の念に、将来的に悪影響を及ぼしてしまう可能性をはらんでいると考えています。昨年の東京五輪招致の例が代表的ですが、安倍政権以降は政治家が皇室を利用するような動きが増えてきています。
世論を無視する形で強引に開催を決めた国葬に皇族が参列すれば、“皇室も国葬を支持している”と受け止める国民もいるでしょう。皇室が築かれてきた国民との信頼関係が揺らいでしまうことにつながりかねないのです」
名古屋大学大学院准教授の河西秀哉さんも警鐘を鳴らす。
「吉田元首相の国葬にも当時は反対論もありましたが、参列された皇太子ご夫妻にまでは批判が及ぶことはなかったように思います。しかし、安倍元首相の国葬に対しては、当時とは比較にならないほどの反発が広がっています。
秋篠宮ご夫妻の参列が考えられますが、眞子さんの結婚や悠仁さまの進学を巡って、秋篠宮ご夫妻への批判はいまだに収束しているとは言えません。それゆえに、批判の矛先が秋篠宮家に向かってしまう可能性を心配しております」
安倍元首相の国葬には、現在200近い国・地域からの出席の意向が示されているという。
「世界中から各国首脳が弔問に訪れることにより日本外交に大きなメリットをもたらす意義も、外交官のご経験がある雅子さまは理解されていると思います。
しかし一方で、ご静養を取りやめられたご配慮によく表れていますが、両陛下は国民の苦難に心を寄せ続けられています。
岸田政権が国民の分断をいとわずに国葬を強行することに対して、両陛下も危惧されているでしょう」(前出・皇室ジャーナリスト)
国葬への参列の影響で、国民が皇室を見放す日が来るかもしれない――。こうした危機感に、雅子さまも憂悶を募らせている。