■和食に込められたおもてなしの心
しかし近年は、諸外国でもフレンチをベースに国ごとのカラーが出る品がメニューに加わることも増えているという。
「こうした時代の潮流を両陛下はくみ取っていらっしゃるのでしょう。令和の皇室の活動が本格的にスタートする矢先にコロナ禍に見舞われ、両陛下はこれまで新しい取り組みを始める際にも制約が多い状況が続いてきました。
キルギス大統領夫妻の来日が決まった段階で、“ぜひゲストに和食を楽しんでもらいたい”というご意向を受け、フレンチのコースの前菜として和食が取り入れられることになったのです。ゆくゆくは、コースのすべてを和食にするおもてなしの形もあるかもしれません」(前出・宮内庁関係者)
優れた国際感覚をお持ちになっている陛下と雅子さまは、コロナ禍で思うようにならない時期を経てようやく、156年目の“皇室革命”とも言える取り組みに着手されているのだ。 皇室についての著作を多数持つ作家のつげのり子さんは、こう話す。
「和食がユネスコの無形文化遺産に登録されてから10年ほどがたち、日本酒も世界各地で人気を博し、輸出量も年々増えています。外国からの賓客も日本食に関心を寄せていると、陛下と雅子さまも感じ取られていたのだと思います。
さらに雅子さまは、ハーバード大学在学中に、日本文化クラブを設立されています。海苔巻きや日本茶を振る舞ったり、日本の名曲をピアノで演奏されたりと、日本文化に興味を持つ人を増やす活動にも取り組まれていました。
外務省にお勤めになっていたころにも、雅子さまは日本料理を習いに行かれていました。長い海外生活から、“日本のことを知る”ということを大切にしてこられたからなのでしょう。これまでのご経験やご知見を、陛下とご一緒に賓客のおもてなしに生かされていると感じました」
幼少期から世界各国で暮らされ、外務省職員のキャリアを生かして皇室の国際親善の場で力を発揮されようと志されてきた雅子さま。このほかVIPに対する接遇ルールにも、大きな変革をもたらされてきた。前出の皇室担当記者は、
「昨秋から外国元首などとの会見の場にラウンドテーブルを設置して、両陛下と相手国の元首夫妻の4人が向かい合ってお話しするスタイルに変えたことも大きな“改革”の一つといえます。これまでは陛下は元首と、皇后さまは元首の夫人と、それぞれやや半身で向かい合われる形で、椅子を左右に分けて置いてお話しされるスタイルでした。
ラウンドテーブルを囲む形は、“賓客を一緒にもてなしたい”という両陛下のお気持ちが強く表れているように思いました。これからも皇室の伝統を受け継ぎながら、ご公務の中で新機軸を打ち出していかれるでしょう」
12月9日に60歳となられるお誕生日を目前にした、雅子さまによる“超刷新”。続く皇室革命は、日本国民のみならず世界の人々をも笑顔にしてくれるだろう。