3月5日、寛仁親王の長女・彬子さまがブータンを非公式に訪問されるため、成田空港を出発された。3月12日までの8日間で、寺院や仏教美術の修復センターなどのご視察のほか、ワンチュク国王への表敬訪問も予定されている。
「今回のご訪問は、ワンチュク国王のいとこにあたるケサン・チョデン王女から招待を受けられてのことです。昨年4月に彬子さまとケサン・チョデン王女が京都で対面された際、両国の美術文化について意見が交わされ、彬子さまはブータンの仏教美術に強い関心を示されたそうです」(皇室担当記者)
彬子さまは、日本の文化や歴史、美術などへの造詣がとても深い。
「04年に学習院大文学部史学科をご卒業後、英国のオックスフォード大に留学されました。10年には、大英博物館が19世紀から20世紀にかけて収集した日本の美術品に関する研究で博士号を取得されています。京都産業大学や立命館大学など、6つの大学で特別教授や客員教授を務めていらっしゃいます」(前出・皇室担当記者)
研究に没頭されるなかで、ある思いを抱かれたという。22年の共同通信のインタビューでは次のように明かされている。
《留学中、在外日本美術コレクションの調査・研究に従事しましたが、文化は研究者だけではなく一般の方々が理解し、守ろうとしなければ残らないことに気が付きました。日本の未来を担うのは子どもたちです。まずはご飯とみそ汁の滋味や畳でごろごろする、そんな小さなことの気持ちよさを伝えることから始めたい》
その思いを実現させるため、12年には京都で一般社団法人『心游舎』を創設し、総裁として子供たちに日本文化を伝える活動に携わられている。その一環で、稲作文化を知ってもらうためにと、子供たちと泥まみれになって農作業を行われることも。
同時に、文学に関するシンポジウムやセミナーにも積極的に取り組まれてきた。18年には源氏物語の魅力を紹介する「源氏物語セミナー」の講師を務められ、古典文学を身近に感じて楽しむ方法について語られている。
「このとき彬子さまは『源氏物語の原文を、半身浴をしながら毎日20分ずつ読み進めました。現代語訳ではわからなかった情景描写の美しさを感じました』と、ご自身の経験を伝えられました。ほかにも、入門書として古典をテーマにしたマンガを勧められるなど、古典文学への親しみ方をアドバイスされました」(前出・皇室担当記者)
そして、皇族としてご公務への責任感を強くお持ちでいらっしゃる。
「11年に新年一般参賀に初めてお出ましになったときに、多くの歓声や、天皇陛下のお言葉に涙を流される国民の姿をみて、皇族のお立場の重みを実感されたといいます」(前出・皇室担当記者)
そのなかで、“皇室に受け継がれてきた文化”の意味や、それを残すことの重要性について意識されるようになったという。前出の共同通信のインタビューでは次のように語られている。
《例えば一般参賀で女性では皇后陛下だけが帽子を着用されません。理由は、皇居は皇后陛下にとって『自宅』の一部だからです。他の皇族方は宮家から外出するので日よけのために帽子を着用されるのだと理解しました。文化の背景には意味があり、その文化を書き留め語り続ける、それが皇族としての私の使命ではないかと思っています》
「ご公務」「研究」「文化の普及」の“三刀流”を継続されている彬子さま。今回のブータンご視察も、今後のご活躍に大いに役立てられるに違いない。