■同じ家族なのに身分が異なる事態が
愛子さまや佳子さまら、女性皇族方が結婚後も皇族の身分を保持することに関しては、各党でおおむね賛同しているのだが……。
「紛糾しているのは、結婚後の夫や生まれてくる子供の“身分”をどうするべきかという点です。立憲民主党の野田佳彦元首相は、夫と子供にも皇族の身分を付与することを検討するべきと主張しています。
いっぽうで自民党や日本維新の会は、夫や子供に皇族の身分を付与するべきではないとしています。子供を皇族とすることによって将来、“女系天皇”が誕生することを危惧しているのです。
いまも“将来は愛子さまに天皇になっていただきたい”という国民の声は多く、“愛子さまのお子さまを天皇に”という声が多数上がることは想像に難くありません」(前出・皇室担当記者)
だが自民党案の場合、愛子さまが結婚されても、夫や子供は皇族ではなく、その立場の違いゆえに、家庭内で孤立感を覚えられる可能性もあるだろう。
3月の自民党大会で岸田文雄首相は皇位継承策の検討を進める考えを明らかにし、拙速なまでに自民党案をまとめさせてきた。その自民党案の問題点について、神道学者で皇室研究者の高森明勅さんが解説してくれた。
「自民党は、’21年に政府有識者会議が報告書で示した案を、そのまま押し通すつもりのようですが、無理があります。
女性皇族方は、皇室を構成するお立場なので制約があります。これは憲法の第1章に、天皇を日本国および日本国民統合の『象徴』と規定し、国政権能を認めないと定めているからです。
これに対して、一般国民の場合は憲法第3章によって幅広い権利・自由が保障されています。たとえば政治活動の自由がありますから、熱心に特定の政党を応援したり、本人が選挙に立候補したりすることもできます。
しかし社会通念上、夫婦・親子は一体と見られがちなので、女性皇族方の配偶者やお子さまがそうした活動をすれば、それは妻であり母親である女性皇族ご自身の活動、さらに皇室自体の活動と受け止められるのを避けにくい。そうすると、天皇・皇室の政治への関与を禁じた憲法の規定に真正面から抵触するでしょう」
さらに高森さんは、女性皇族の結婚のハードルが大幅に上がる可能性も指摘する。
「たとえばどこに住まれるのか。皇居や赤坂御用地など皇室関係の施設に一般国民が住むことはできません。そうすると、警備はどうするか、といった課題も生じてくるのです。近代化以降、まったく前代未聞の夫婦・親子の身分が違う家庭になる。そうした不透明な将来を選択する国民男性が果たしてどれほどいるでしょうか」
愛子さまは日赤ご入社にあたってのコメントで、ご結婚について次のようにつづられていた。
《一緒にいてお互いが笑顔になれるような関係が理想的ではないかと考えております。両親から具体的なアドバイスを頂いたことは特にございませんが、両親のようにお互いを思いやれる関係性は素敵だなと感じます》
そうした“お互いが笑顔になれるような”理想のお相手に巡り合うための、自由な恋愛の機会の?奪に結びつきかねない要因がもう1つ、自民党案には含まれている。
《旧宮家の男系男子を養子として皇籍に復帰させる》という提案に、ある意図が透けて見えると、宮内庁関係者は語る。
「旧宮家の“男系男子”といっても、国民にとっては親しみのない存在で、受け入れられるかは疑問が残ります。それにもかかわらず自民党が養子案に固執するのは、あるもくろみがあるからでしょう。かねて愛子さまをはじめとする女性皇族と“旧宮家男子”の結婚を実現させようとする声が、保守系の少なからぬ議員から上がっているのです」
安倍晋三元首相は、’17年2月の有識者会議メンバーとの会食の席で、「女性皇族が『旧宮家』の男性と恋に落ちて結婚し、男子が生まれたら万々歳なんですが」と発言したと報じられている。