「こういうのはね……」
「うん、だいぶ久しぶり」
天皇陛下と雅子さまは、お二人で顔を見合わせてほほ笑み合われた。8月21日から、那須御用邸でのご静養に入られた両陛下。ご到着後、敷地内の「嚶鳴亭」と呼ばれる休憩所の周辺を散策され、冒頭のように語り合われたのだ。
お二人きりで地方で静養されるのは、愛子さまがお生まれになる前の2001年夏以来。皇室担当記者は、
「例年は愛子さまもいらっしゃるので、『那須どうぶつ王国』や『那須テディベア・ミュージアム』『那須ステンドグラス美術館』といった、ご一家で一緒に楽しめる施設に足を運ばれます。
そうした場所では、地元の人々をはじめ、旧知の方々とお会いになることが恒例となっていますが、今年は御用地からあまり外に出るご予定はないようです。御用邸に引いている温泉に浸かられたり、ゆっくりと日ごろのお疲れを癒されると聞いています」
那須高原の農家や住民でつくる那須嚶鳴会の会長を務めていた市村利男さんは、両陛下のご滞在中の過ごされ方についてこう話す。
「以前から、天皇皇后両陛下が那須にお越しになると、御用邸の敷地内で地元住民がお迎えし、両陛下からお声がけされる場がしばしば設けられます。7月に上皇ご夫妻がいらしたときにも、嚶鳴亭でお声がけをいただきました。
今回の両陛下のご静養では、挨拶の場についてお知らせがなかったので、きっと今回はお二人だけで、静かにお過ごしになりたいとお考えだったのでしょう」
■自然いっぱいの真夜中の那須で…
東京ドーム142個分とも言われる広大な那須御用邸の敷地。高いところで標高1400メートルほどにもなる敷地には、深い森など豊かな自然が残っている。記者からご滞在中に計画されていることを尋ねられた雅子さまは、
「この中で、歩ければいいかしらと思っております」
と応じられ、陛下も、
「本当に自然が豊富ですのでね、那須の自然を楽しむことができれば」
と、ほほ笑まれながらお話しになっている。じつは、お二人きりで楽しみにされていることがあると、宮内庁関係者は明かす。
「両陛下は昨年のご静養時、愛子さまがお生まれになる前のエピソードをお話しになっています。お二人でテントを張り、その中で寝袋に入っていたら、その場所が斜面だったために、お二人で転がってしまった……というお話に、報道陣も笑いに包まれました。
またこのとき、1997年に“大彗星”として世界で観測されていたヘール・ボップ彗星をお二人で観察されたことも明かされています。お話しされつつ陛下が『ヘール・ボップ彗星が見られたのですよ。こちらで』と指さされた方向を、雅子さまが『こちら側』と逆の方向を“ツッコミ”のように示され、愛子さまや側近にも笑いが広がっていました。
ふだんの私生活や、時には公的なおつとめでも、両陛下は愛子さまとご一緒であることが当たり前となっており、久しぶりにお二人だけでのご静養となります。テントからゆっくり星空を眺めるなど、新婚時代を思い出すような時間を過ごすことを、両陛下も期待されていたようにお見受けしています」
新婚時代は、雅子さまが愛車・カローラIIを運転されて御用地の周辺をドライブされたこともあった。近隣の茶臼岳や朝日岳へ登山されたり、30本はあるという敷地内の道を散策し、季節の草花や生き物の観察を楽しまれたりすることが多かったという。
「昨年に続いて取材に応じられた嚶鳴亭は見晴らし台でもあり、天体観測にうってつけの場所です。1997年に彗星をご覧になったときも、テントを張られて夜通し空を眺められていたのでしょう。
陛下が学習院初等科のころからずっと愛用されている天体望遠鏡で、将来の夢などを語り合いながら星々をご覧になるのは、お二人の仲をいっそう深める時間となっていたのだと思います」(前出・宮内庁関係者)
27年ぶりの「星空デート」の復活は、愛子さまの“アシスト”があったからだと、この宮内庁関係者は続ける。
「今回愛子さまが同行されなかったのは、所属される青少年・ボランティア課の業務が忙しい時期にあたり、長いお休みが取れなかったからだそうです。そういう事情もあって、“愛子が休みを取れないのなら……”と、両陛下は当初、今回のご静養には消極的なご様子だったそうです。しかし最終的に愛子さまが、“せっかくだから二人で”と背中を押されたと聞きました。
たしかに例年、両陛下は愛子さまのことを第一に考えた過ごし方のプランをお考えになります。愛子さまが両陛下を気遣われ、お二人きりの時間をプレゼントなさったようにも感じました。きっと両陛下はこのお気遣いに感謝されながら、満天の星を眺めつつ、愛子さまの将来の幸せを願われ、これまでの思い出を語り合われているのでしょう」
愛子さまが贈られたかけがえのない“二人きりの星空”に、雅子さまと陛下はあらためて、愛を誓い合われていることだろう。
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